新卒&元プロ2人で“始動” 指揮官は元オリ日本一戦士…新規参入「楽しみしかありません」

サムティ・小川博文監督【写真:北野正樹】
サムティ・小川博文監督【写真:北野正樹】

元オリックスの小川博文氏が「サムティ」の監督に就任

 オリックスで1996年に内野手として日本一に貢献した小川博文さんが、社会人野球「サムティ」の監督として指導を開始して6か月が経った。8月に公式戦に初出場し、9月の日本選手権予選に挑戦するなど、本格的なスタートを切る。

「これまで練習試合では食らいついてはいけましたが、勝ち切れなかった。悔しい思いをして練習を続けた選手たちが、どれだけ成長したのか楽しみしかありません」。初の公式戦を前に、小川監督が真っ黒に日焼けした顔をほころばせた。

 小川監督は、拓大紅陵高(千葉)、プリンスホテルから1988年ドラフト2位でオリックスに入団。拓大紅陵高で3年の春夏に甲子園に出場、プリンスホテルでは都市対抗、日本選手権に出場し1988年ソウル五輪で二塁手として全試合に出場して銀メダル獲得に貢献した。

 阪急から球団買収して発足した「オリックス・ブレーブス」の1期生。1年目の開幕戦から「9番・遊撃」で出場し、コンパクトに広角に打ち分ける巧打と堅守で114試合に出場してレギュラーを確保した。2001年から横浜に移籍し、2004年に現役引退後はオリックスやDeNAで1軍打撃コーチなどを務めた。

 その後、オリックスのジュニアチーム監督や野球解説に携わっていたが、社会人野球チームを作るという大阪に本社を置く総合不動産事業を展開するサムティから監督就任の打診を受けたのだった。

「挨拶はもちろん、人の心の痛みもわかることができる人間性」

 選手集めを含め、1からチームを作り上げていく難しさは十分に理解していたが、同社の小川靖展社長の理念に心を動かされ2023年12月に就任した。「野球部の活動を通して社員の一体感を求めたいという小川社長の言葉と、室内練習場や合宿所の設計図まで準備して説明される熱い思いに感動しました」。

 社会人野球への魅力を改めて感じたのも、受諾した大きな要素だった。「指導者の方々が僕の将来を描いてくださり、社会人で野球をすることができたのが、高校野球とともに僕の野球の原点なんです。地域や会社を代表して出場する都市対抗はもちろん、日本選手権でも社員の皆さんの熱い応援を受けてプレーすることができました」。社会人野球の使命を知るからこそ、小川社長の言葉が胸に刺さったのだった。

 2025年2月1日に新しいチームが、同社が運営するテーマパーク「ネスタリゾート神戸」内の合宿所、室内練習場で発足した。23人の選手のうち、21人は小川監督が岸田光二ゼネラルマネジャーとともに、1年かけて全国の約30大学を回ってリクルートした新卒の選手。会社案内から説明しなければならないハンディキャップは、小川監督の熱意でクリアした。

 元プロ野球選手も加入した。DeNA、阪神、ヤクルトでプレーした尾仲佑哉投手、元ソフトバンク、広島の曽根海成内野手は、戦力であるとともに若い選手のお手本として期待を込める。小川監督が選手に求めるのは、「最後まで諦めないこと。いろんな人の思いを背負っているのですから」。

 大前提としていることがある。「目標は全国大会での優勝ですが、目的は野球を通じて1人前の社会人になることです。挨拶はもちろん、人の心の痛みもわかることができる人間性。ただ野球がうまいというだけではいけないのです。選手がNPB(日本野球機構)に進むというのは、結果でしかありません」。人間形成を重要視する社会人野球の原点を貫く。

 初の公式戦となった「姫路市長杯」(参加12チーム)では初戦のJRSレールスターズ戦に8‐0(7回コールド)で快勝。日本選手権(10月28日から、京セラドーム)の近畿地区予選は、9月15日(わかさスタジアムほか)から始まり、サムティは同日の第1試合で島津製作所と対戦する。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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