“投手を守る”球数制限は本当に必要か 障害予防には効果も…甲子園606球V腕の提言

2001年夏の甲子園で日大三を優勝に導いた近藤一樹氏【写真提供:産経新聞社】
2001年夏の甲子園で日大三を優勝に導いた近藤一樹氏【写真提供:産経新聞社】

2001年夏の甲子園で優勝…オリックスやヤクルトなどで活躍した近藤一樹氏の提言

 2001年夏の甲子園で全国制覇を果たした日大三高の右腕、近藤一樹さん(元近鉄、オリックス、ヤクルト)は、甲子園優勝までの6試合で606球を投げ抜いた右腕だ。その経験を持つからこそ、見えてくる「球数制限の本質」と「投手の怪我」についての思いがあるという。少年野球の指導にもヒントになる見解を語ってもらった。

 高校野球の球数制限は、投手の健康を守る目的で設けられた。過去には1人のエースが大会を投げ抜く名シーンが数多く生まれてきた。しかし現在では、そうした光景は見られなくなりつつある。

「球数制限については、正直ありだなと思う半面、そこまで気にしなくていいのかなっていう思いもあるんですよね」と近藤さんは語る。賛成する理由について、自身の経験を踏まえ「僕が少年時代の成長期にしか起きない離断性骨軟骨炎という肘の病気、怪我をしたんですけど、それをしたことを当時、気がついてないんですよ」と語る。

 離断性骨軟骨炎は肘関節内で軟骨が剥がれ落ちる障害で、成長期の小・中学生に多く発症する。この経験から「それを起こさないようにしてあげないと、という意味で球数制限はすごくありだなと思います」と理解を示す。

 一方で、別の視点も持っている。「球数制限をしなくても、リカバリーであったりとかそういう練習方法を知っていれば、僕は(制限は)いらないと思っているんですよ」。指導者が投球フォームについても改善方法を持って、その投手に合った投げ方にしてあげることができれば、大きな問題にはつながらないのではないかという考え方も持っている。

投手の球数にも“質”があるという(写真はイメージ)
投手の球数にも“質”があるという(写真はイメージ)

現在は高校や大学女子野球部で投手コーチ

 最も重要なのは、同じ球数でも“質”に違いがあるという点だ。「バランスよく投げた100球と、調子が悪くて力んだ100球って全然違うんですよ」。数字だけでは測れない投手の状態を見極めることの大切さを説く。「バランスのよい100球を投げた人は、110球でも120球でもよかったりするんですよ。逆にバランスが悪い、調子がよくないという投手に対しての球数制限はありだと思う」。甲子園大会などで100球以上投げた投手、起用した指導者が必ずしも悪いわけではない、ということだろう。

 現在、近藤さんは指導者として現場に立つ。日大三の同期だった内田和也氏が監督を務める東京・立正大立正高や、桃山学院大女子硬式野球部などで投手コーチを務め、次世代の育成に携わっている。606球を投げ抜いた経験と、自身が患った離断性骨軟骨炎の教訓を活かし、選手1人1人の状態を見極めながら指導にあたる。

 球数制限は子どもたちの体を守る手段にはなる。ただ伝えたいのは、数字だけでなく選手の体調や投球フォーム、練習方法を総合的に判断することの重要性だ。指導者がしっかりと選手を見て判断してあげること。それこそが、次世代の投手を守り、育てる最良の方法なのかもしれない。

(First-Pitch編集部)

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