遠ざかるシュワーバーの背中…大谷翔平が背負う“重圧” 専門家が見た決定的な違い

ドジャース・大谷翔平【写真:ロイター】
ドジャース・大谷翔平【写真:ロイター】

大谷は3打数1安打2四球で20試合連続出塁もノーアーチ

【MLB】フィリーズ 6ー5 ドジャース(日本時間16日・ロサンゼルス)

 ナ・リーグ本塁打王争いは15日(日本時間16日)のカードを終え、フィリーズのカイル・シュワーバー外野手が53発を量産し、49発のドジャース・大谷翔平投手に4本差をつけてトップを独走している。同日にドジャースタジアムで行われた“直接対決”では、シュワーバーが初回に53号を放った一方、大谷は3打数1安打2四球で連続試合出塁を「20」に伸ばすもノーアーチに終わり、両者の差は広がった。

 大谷は初回、フィリーズ先発の左腕レンジャー・スアレス投手に対し、カウント3-2から内角いっぱいの147キロのストレートを見送り三振。1点ビハインドの7回、1死走者なしで迎えた第4打席でも、2番手の右腕オライオン・カーカリング投手に対し、同じくフルカウントから内角低めの156キロの速球を見逃して三振に倒れ、この判定には思わず目を丸くして驚いた。

 現役時代にNPB通算2038安打を放ち、MLBにも詳しい野球評論家・新井宏昌氏は「2つの見逃し三振はいずれもカウント3-2から、少し見切りが早かったですね。振りにいって途中でバットを止めたのではなく、『ボール球には決して手を出さず、四球で出塁しよう』という意識がうかがえました」と分析する。

 というのも、ドジャースはナ・リーグ西地区の優勝争いで首位に立っているものの、2位のパドレスとはわずか2ゲーム差(同日時点)。今季残り12試合となっても、依然予断を許さない。そんな中、大谷の後ろの2番を打つムーキー・ベッツ内野手が前週(8~14日)の週間MVPに輝く活躍で調子をぐんぐん上げている。大谷としては出塁してベッツにつなぐことが最優先で、おそらくタイトル争いへの意識はほとんど無いのだろう。

「大谷の打順が中軸の3、4番であれば、また違うかもしれません。見ていると、もっと打ちにいっていい気もしますが、1番打者ですから、リードオフとしての役割を果たそうという意識がなおさら強いのだと思います」

 0-1の1点ビハインドで迎えた3回1死三塁の第2打席は、やはりカウント3-2から、スアレスのカーブを見極め四球。5回、マックス・マンシー内野手のソロで勝ち越した直後の第3打席では、1死一塁で右翼線二塁打を放ちチャンスを広げ、ベッツの中犠飛につなげた。5-5で迎えた9回2死走者なしの“一発サヨナラ”の場面でも、相手の守護神ジョアン・デュラン投手から四球を選んだ。

ドジャース戦で本塁打を放ったフィリーズのカイル・シュワーバー【写真:荒川祐史】
ドジャース戦で本塁打を放ったフィリーズのカイル・シュワーバー【写真:荒川祐史】

グリップを高い位置に置く大谷、脱力した感じで低い位置で構えるシュワーバー

 一方のシュワーバーは初回、ドジャース先発の左腕アンソニー・バンダ投手に対しカウント2-2から、外角のスライダーに少し泳がされながらも右中間席へ運んだ。

「グリップを高い位置に置いて大きく構える大谷と比べると、シュワーバーは脱力した感じで、グリップも胸のあたりの低い位置に置き、構えだけを見ていると、まるでアベレージヒッターのようです。スイングも後ろが小さくコンパクトですが、それでいてインパクトの瞬間に大きなパワーを発揮しています」

 ライトからレフトまで、あらゆる方向のスタンドに放り込めるところは大谷と共通。8月28日(同29日)のブレーブス戦で、大谷がいまだ達成したことのない1試合4本塁打(MLB史上21人目)の離れ業を演じた爆発力は脅威だ。

 今季打率は.244で同.281の大谷に比べると確実性では劣る。もともと、2022年には200三振を喫し、同.218の低打率ながら46本塁打を量産。翌2023年には215三振、打率は2割を切る.197と低迷しながら、47本塁打を放ったほど“三振かホームラン”の印象が強い打者である。今季打率はシュワーバーにしてはむしろ上々の部類で、三振数はリーグで2番目に多い177。3番目の171三振を喫しているのが大谷だ。

 今季残り試合は、3年連続本塁打王を狙う(一昨年はア・リーグ、昨季はナ・リーグで獲得)大谷のドジャースが「12」、フィリーズは「11」。シュワーバーが優位に立っているのは間違いないが、ファンを沸かせるラストスパートを大谷に期待したい。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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