大谷翔平は本当に「勝負弱い」? 得点圏打率101位も…証明する「5.99」の“価値”

得点圏では打率.247、8本塁打…時に「勝負弱い」との指摘も
ドジャース・大谷翔平投手は2年連続でポストシーズンに進出し、4日(日本時間5日)からフィリーズとの地区シリーズに臨む。今季も圧倒的な成績を残した一方で、一部からは「勝負弱い」との声も聞かれた。確かに得点圏打率は.247と、シーズン打率.282を下回っている。しかし、本当に大谷は「勝負弱い」のだろうか。
打者としての大谷はまさに“最強”だった。シーズン最終戦で自己・球団記録を更新する55号本塁打を放ち、3年連続の本塁打王こそ逃したが146得点はメジャートップ。長打率.622、OPS1.014、89長打、380塁打、20敬遠、ISO.340など主要スタッツで“7冠”を達成した。
それでも「得点圏で打てない」という批判は絶えなかった。55本塁打のうち得点圏で生まれたのは8本。8月以降12本連続ソロ弾となったことも話題となった。規定打席到達者145人中、得点圏打率.247は101位。数字だけを切り取れば「勝負弱い」という評価は一定の説得力を持つ。
ただし、得点圏打率はあくまで一側面に過ぎない。10点差で放った適時打と、土壇場のサヨナラ本塁打はいずれも「1打点」として記録されるが、その価値は大きく異なる。その点、セイバーメトリクスでは勝利への貢献度を測る指標「WPA(Win Probability Added)」があり、試合展開を踏まえて打撃の真価を数値化している。
そして今季、このWPAでメジャー全体1位に君臨しているのが「5.99」の大谷だ。2位はヤンキースのアーロン・ジャッジ外野手(5.61)、3位はメッツのフアン・ソト外野手(.508)と続く。さらに試合展開が勝敗に直結する「High Leverage」シチュエーションでも打率.326、出塁率.492を残し、OPS1.143もメジャートップに立っている。
実際、今季のワイルドカードシリーズ第1戦では初回に先頭打者弾を放ち、試合の流れを引き寄せた。得点圏ではなかったが、先制点という“価値ある一打”がチームに勢いを与えたことは明白だ。数字を多角的に見れば、「勝負弱い」というレッテルは的外れと言える。
大谷翔平は、間違いなくメジャーを代表するクラッチヒッターだ。
(新井裕貴 / Yuki Arai)