世界で高まる“日本選手需要” 渡航費なしでテスト可能…「ハードル低くなった」米球界挑戦

「Be an Elite.」代表の松本憲明氏【写真:伊藤賢汰】
「Be an Elite.」代表の松本憲明氏【写真:伊藤賢汰】

MLB選手を間近に練習できるのもメリット…米国でキャリアを築く新選択肢

 野球少年たちにとって、夢をつかむための選択肢は広がっている。MLBをはじめ、“プロ野球選手”としてキャリアを築く方法として米国の独立リーグを選ぶ選手が増えている。日本人を求める球団の需要は高く、今月末には日本でトライアウトが実施される。米国で野球を学び、帰国後に名古屋市で米国式野球アカデミー「Be an Elite」を立ち上げた松本憲明さんは、「私たちのアカデミーに来ていた選手の中にも、日本の高校を中退して米国の大学に進学したり、20歳前後で米国の独立リーグに入団したりしています。チャンスをつかむために、渡米を選ぶ選手は増えていると感じます」と話す。

 投手だった松本さんは東洋大1年生の時にトミー・ジョン手術を受け、翌年に大学を中退した。その後、独立リーグの徳島インディゴソックスで2年間プレーし、2018年にメジャーリーガーを目指して米国へ渡った。メジャーのトライアウトには合格できなかったものの、9か月間の滞在期間に米国の施設で指導を受け、最速143キロだった球速は151キロまで上がった。

 利用していた施設にはメジャーのトップ選手や独立リーグの選手もいた。松本さんは「最新の知識や技術を得られますし、目標とするメジャーの選手を間近に練習できるところも米国に渡る大きなメリットです」と説明する。そして、日本人が米国でプレーするハードル自体も低くなっていると指摘する。

「自分の頃よりも米国の独立リーグに入りやすくなっています。世界的に日本人の需要が高いので、今は日本でも球団のトライアウトが開催されています。渡航費をかけずに参加費だけで受験できるので金銭的な負担を軽減できます。米国の独立リーグはミールマネーといって毎日の食事代が月給と別に支給されます。契約内容によっては入団後の渡航費や渡米後の住まいが無償になるケースもあります」

ケベック・キャピタルズが「ジャパントライアウト」を開催する【画像:主催者提供】
ケベック・キャピタルズが「ジャパントライアウト」を開催する【画像:主催者提供】

米国で球速アップした松本氏…経験はセカンドキャリアに生きる

 直近では今月30日、31日の2日間、東京近郊で「ケベックキャピタルズ」のジャパントライアウトが行われる。ケベックキャピタルズはMLBと業務提携を結んで運営されている北米独立リーグに所属し、今季はリーグ戦4連覇を成し遂げた。

 トライアウトを主催する野口貴弘さんは米国の独立リーグでコーチやトレーナーを務めた経験があり、「近年は海外に挑戦する日本人選手が増えています。その中で上のレベルを目指すのであれば、ケベックキャピタルズというチームはとても良い選択になります。日本の選手たちに新たな道や選択肢を提供し、挑戦を後押したいと思っています」と語る。

 仮に選手として成功できなくても、米国での経験はセカンドキャリアに生きる。松本さんは米国での学びを現在、指導者としての基礎としている。他にも英語を生かした仕事に就いたり、スポーツマネジメントの道に進んだりする人もいる。松本さんは「今の自分があるのは、米国の経験が全てとも言えます」と力を込める。野球でチャンスをつかむには、米国も有効な選択肢の1つとなる。

ケベックキャピタルズのトライアウト申し込みや詳細は公式HPから。対象者は満18歳以上の野球経験者。
https://ovssports073.my.canva.site/capitalestryoutjpn

(間淳 / Jun Aida)

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