大谷翔平、激動の1年完結 有言実行の“8”…長女誕生、日本凱旋から始まった伝説シーズン

ドジャース・山本由伸を労う大谷翔平(中央)【写真:荒川祐史】
ドジャース・山本由伸を労う大谷翔平(中央)【写真:荒川祐史】

自身4度目のシーズンMVPは確実視…フィールド内外で存在感

【MLB】ドジャース 5ー4 Bジェイズ(日本時間2日・トロント)

 ドジャース・大谷翔平投手が、またひとつ伝説を刻んだ。1日(日本時間2日)、敵地で行われたブルージェイズとのワールドシリーズ第7戦。ドジャースは劇的な勝利を収め、21世紀初となる2年連続のワールドシリーズ制覇を達成した。その中心には、もちろん大谷の姿があった。彼にとっての2025年は、野球人生でも指折りの“激動の一年”。父として、そして球界の頂点に立つスーパースターとして、全てを注ぎ込んだ365日だった。

 昨年末、自身のSNSで妻・真美子夫人の妊娠を公表。そして4月18日(同19日)には、第一子となる長女の誕生を報告した。「父親リスト」入りによる欠場も話題となったが、試合前には家族とともに球場入りする姿も見られ、ファンの間では“父・大谷”としての新たな一面が注目を集めた。

 昨年は韓国で開幕し、今年は“日本凱旋”からスタートした。東京ドームでの第2戦では早くも今季1号を放ち、凱旋試合を祝うアーチで日本中を沸かせた。シーズン序盤はタイムリー欠乏症に陥るも、5月に入ると一気に爆発。月間15本塁打、OPS1.180を記録し、通算6度目の月間MVPを受賞した。

 そして6月16日(同17日)、ついにあの瞬間が訪れる。2023年8月23日以来、実に663日ぶりの投手復帰。急きょの発表に日米は騒然とし、マウンドに立つ大谷の姿にファンは総立ちとなった。前半戦は32本塁打、リーグトップの長打率.605を記録。オールスターではナ・リーグ最多票の396万票を獲得し、圧倒的な存在感を示した。

 後半戦に入ると、打撃と投球の両輪が完全にかみ合った。8月27日(同28日)のレッズ戦では5回1失点9奪三振で749日ぶりの勝利。9月は体調不良で先発を一度スキップしたものの、以降の3登板で自責点ゼロ。9月17日のフィリーズ戦では、5回無安打無失点の快投に加え、8回には50号本塁打を放つ離れ業。2年連続50本塁打は史上6人目の快挙だった。シーズン最終戦では55号をマーク。わずか1本差で本塁打王を逃したが、OPSや得点など主要7部門でリーグを制した。

ドジャース・大谷翔平【写真:荒川祐史】
ドジャース・大谷翔平【写真:荒川祐史】

LCS第4戦は1試合3HR&7回途中無失点…WSは9打席連続出塁の伝説

 ドジャースは地区優勝を成し遂げたものの、勝率リーグ3位でワイルドカードシリーズからの登場だった。そして、大谷がいきなり魅せた。初回先頭で剛腕ハンター・グリーンから先頭打者弾を叩き込み、チームとしてのポストシーズン最初の得点を挙げた。さらに6回にも一発。ポストシーズン自身初の1試合2発から幕開けした。

 2連勝で突破し、大谷はフィリーズとの地区シリーズのマウンドに上がった。自身初のポストシーズン登板は6回3失点9奪三振の粘投で初勝利を飾った。もっとも、肝心のバットでは左投手攻めに苦しみ、18打数1安打の打率.056、0本塁打1打点。ロバーツ監督から苦言を呈されることもあった。それでも、チームの奮闘で3勝1敗で突破。リーグ優勝決定シリーズでは、今季0勝6敗と勝てなかったブルワーズと対峙することになった。

 相手が代わっても、大谷のバットからは快音が聞かれなかった。しかし、それは爆発前の“前兆”だった。10月17日(同18日)の第4戦で「頭がおいつかない」(山本由伸)、「歴代最高のパフォーマンス」(米放送局ESPN)、「地球上で最高」(ロバーツ監督)などと称賛の言葉が並び立つ、伝説的な活躍を見せつけた。

「1番・投手兼指名打者」で先発出場した大谷は初回を3者連続三振で締めると、その直後に先頭打者弾を叩き込んだ。さらに4回2死の第3打席では469フィート(約142.9メートル)の超特大アーチを放ち、場外弾という歴史的な一発を刻んだ。7回途中無失点で降板したその裏、中堅左へ3本目のアーチ。ポストシーズン史上11人目の1試合3本塁打の大暴れ。“たった1試合”の活躍でシリーズMVPに選ばれた。

 そして2年連続でのワールドシリーズの舞台に到達した。迎えるは、2023年オフに大谷争奪戦に最後まで加わっていたブルージェイズ。獲得を逃したカナダファンからは「We don’t need you(お前はいらない)」の大合唱が起きた。しかしどこ吹く風。大谷は自身初のワールドシリーズ初アーチを叩き込んだ。昨年は第2戦で盗塁を試みた際に右肩を脱臼し、本調子とは言えなかったが、いきなり千両役者の活躍だった。

 1勝1敗で本拠地に戻っての第3戦。大谷は再び伝説を樹立する。第1打席で二塁打、第2打席で2号、第3打席は適時二塁打で反撃の狼煙を上げると、勝ち越された第4打席では同点弾を叩き込み、ガッツポーズを見せた。ワールドシリーズ1試合4長打は史上2人目、119年ぶりだった。すると、ブルージェイズは9回の第5打席から4打席連続申告敬遠と完全に“白旗”。ポストシーズン初の1試合4敬遠、史上最多の1試合9出塁、球団新の1試合12出塁など、“大谷個人軍”とも言える大活躍だった。

 第4戦はワールドシリーズ初登板となった。しかし延長18回の激闘も影響してか、ゲレーロJr.に2ランを浴びるなど、7回途中4失点に終わった。第4・5戦は無安打に終わり、チームは崖っぷちに追い込まれた。それでも第6戦では3試合ぶりとなる二塁打をマーク。運命の第7戦は再び投打同時出場で先発した。状態が上がらず3回に3ランを献上する無念の登板だったが、打席では2安打3出塁と貢献した。

 優勝の最後の瞬間はベンチで見届けた。ガッツポーズを掲げ、ナインと歓喜の輪を作った。試合後には米放送局「FOX」に出演し、「ゲームに100%の形で臨めたのが一番楽しかった。去年は、(グラウンドに)出て、(ベンチに)戻って患部を温めてもらって、注射してもらって……みたいなことを繰り返していたので、野球やってるなっていう雰囲気がなかった。今年は全然違うワールドシリーズになったのかなと思います」と2度目の優勝を噛み締めた。

 大谷は昨年のワールドシリーズ制覇後、アンドリュ―・フリードマン編成本部長に「あと9回やってやろうぜ!」と話した。カウントダウンは1年後に「8」となった。一歩一歩、着実に。大谷とドジャースはダイナスティ(王朝)を築き上げている。

(Full-Count編集部)

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