大谷翔平へ「3年続けて一人前だよ」 ミスターの激励から9年…2025年MVPが持つ意味

ドジャース・大谷翔平【写真:ロイター】
ドジャース・大谷翔平【写真:ロイター】

大谷の3年連続受賞はバリー・ボンズ以来の快挙

 ドジャース・大谷翔平選手を取材して今年で11年目になる。毎年11月中旬に発表される大谷のMVP受賞は、もはや風物詩に。記者はただ長くやっているというだけで、ありがたいことにテレビ局から出演オファーもいただくのだが、その時にテレビ局員の方からこう質問された。

「大谷選手にとって、今年のMVP受賞はどんな意味を持ちますか?」

 記者の脳裏に浮かんだのが、前職の報知新聞時代の2016年オフに担当させてもらった大谷と長嶋茂雄終身名誉監督との対談でのワンシーンだ。まだ22歳だった大谷は、同年に10勝&22本塁打でMVP初受賞。日本ハムの日本一に貢献し、スターダムを駆け上がろうとしているところだった。約50分の対談中、ミスターからこう激励された。

「大谷くん、3年続けて初めて一人前だよ」

 今年のナ・リーグ優勝決定シリーズ第4戦では1試合3本塁打&10奪三振。投打に渡る伝説的なパフォーマンスは誰もが魅了される。だが、当然、毎試合できるわけではない。大谷もMVPについて「怪我なく1年間しっかり自分の仕事をやった先に」と語っていたが、簡単そうに見えて難しいのがシーズンを通して怪我なくプレーすることだ。

 2022年は規定打席、規定投球回の“ダブル規定”に史上初めて到達したものの、MVP争いはリーグ新62本塁打を放ったアーロン・ジャッジに軍配が上がった。この年もMVP級の活躍だったのは間違いないが、最優秀選手、世界一の選手にはなれなかった。その翌2023年から3年連続MVP受賞。ミスターも認める一人前、本物の世界一の選手になったと言えるのではないか。

 MVP発表から30分後に行われた電話会見。「次の個人的な目標は?」と問われた大谷は「(個人成績は)目標というより楽しみ」と語った。来季へプレッシャーは間違いなくあるだろうが、自身の成績が「楽しみ」なんて答えられるのは、よほど自信がないと言えない。オフに入ってから「家でウエートをしている」と語っていたものの、見えないところで相当な努力を積んでいるのだろう。

 4回の受賞は7度を誇るバリー・ボンズに次いで歴代単独2位の快挙だ。「最初からMVPを目標にすることはないですけど、怪我なく1年間しっかり自分の仕事をやった先に何度も受賞できればいいかなと思います」。来季は32歳シーズン。あと3回の歴代最多受賞は十分に射程圏内だ。

○著者プロフィール
小谷真弥(こたに・まさや)1983年、大阪・大阪狭山市生まれ。埼玉・東松山市育ち。明大明治高、明大野球部を経て2006年報知新聞社に入社。地方部(富山・石川)を経て2009年に運動第一部(野球部)へ異動。2009年ロッテ、2010、11年横浜、2012年から巨人、2015年から日本ハム、2017年からメジャー担当。2019年2月からFull-Count編集部に所属。

(小谷真弥 / Masaya Kotani)

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