負けパターンは「失策や四球がほとんど」　“急造野手”でも自信…ロッテJr.が施す秘策

マリーンズJr.の小林宏之監督が練習で力を入れるシートノック

　小学生の逸材が集い、日本一を争う「NPBジュニアトーナメント KONAMI CUP 2025」は26日から神宮球場と横浜スタジアムで開催される。2010年以来15年ぶりの優勝を目指す千葉ロッテマリーンズジュニアは、小林宏之監督が2年ぶりに指揮を執る。4度目の采配となる中、練習で力を入れているポイントに言及した。

　約800人が参加したセレクションでは、守備面やスローイングを重視して選考を行った。今年のメンバーの特徴として、「普段プレーしているチームでは投手や捕手しかやったことがない選手が多い。初めて遊撃や二塁をやる選手もいる」という。「少年野球は投手が良ければある程度は勝ち上がっていける。肩が強くて球が速い選手は、自チームではどうしても投手や捕手になるということでしょう」と傾向を分析する。

　16人の限られたメンバーで戦う中で、急造の野手が多くなるのは承知の上。「基本的に捕って投げるのは上手。ここ1、2か月はシートノックが多くなっています」と説明する。走者を置いて行うこともあるシートノックでは、カットプレーやカバーの動きの基本などを入念に教え込んでいる。

　出場する各チームは好投手をそろえており「試合ではなかなか打てない。打って点を取るのは難しい」。自然とロースコアの展開が増える中、鍵を握るのが守備力。「練習試合でも、失策や四球から失点を重ねて負けるケースがほとんどです」と、鍛えるべきは投手を含めた守りであることを強調した。

　二塁を守るのは背番号「1」の糟谷悠主将（6年＝海上学区スポーツ少年団）。自チームではやはり投手と捕手が主な役割だが、マリーンズジュニアでは内野の要を担う。ジュニアチームに選ばれるため、守備力を強化してセレクションに挑戦。選出されると、「このチームで、みんなをまとめたくてキャプテンになりたいと思いました」と自チームでも経験がない主将を自ら志願した。

1日2試合の練習試合で、メンバー16人全員が先発出場する理由

　普段は別々のチームで活動しているだけに「まとめるのが結構、大変です」というものの、小林監督は「非常によく引っ張ってくれている」と評価する。最近の子どもたちの傾向を「悔しさを表に出すようなガツガツ感がなく、優しい子が多い」と分析する同監督は、糟谷主将について「一生懸命に声を出して引っ張っていこうとしている」と頼もしそうに話した。

　内野や外野の経験が少ない選手が多いこともあり、1日2試合の練習試合の際は16人全員を、どちらかの試合で必ず先発出場させて経験を積ませている。「保護者も車で送迎していて、自分の子どもが出ないと寂しい。帰りの車の中で親子で反省会をしてくれたらいい。お父さん・お母さんの言うことの方がビシッと聞きますから」と、もう1つの狙いも明かした。

　内外野の守備は急造の半面、投手陣の駒は豊富という利点もある。NPBジュニアは今年から、4チームずつ4グループに分かれてのリーグ戦を実施。各グループの1位が決勝トーナメントに進出する。準決勝と決勝は1日で行うため投手起用は難しくなる。球数制限も考慮しなければならないが、小林監督は「練習試合と同じで、短いイニングで切っていきます」と言い切った。

「どんなにいい投球をしても2、3イニングで切ろうと思っている。だから球数は気にしていません。基本的にはイニング完了での継投でいきます」。小刻みにつぎ込めるだけの、好素材の投手がそろっている。

「後悔が残らないように練習やって、大会は楽しくやってもらえればいい。それまでは厳しく指摘することもあります。一生『マリーンズジュニア出身』と言われますから『こんなことも知らないのか』と言われないように、今後の野球人生を考えて指導しておきます」。元プロ野球選手から丁寧に教わる野球の基本。選手は貴重な時間を過ごしている。

（尾辻剛 / Go Otsuji）