同期は続々大企業も…選んだ独立Lの“低迷球団” 指名漏れ→慶大左腕が選んだ茨の道

香川オリーブガイナーズへ入団した“慶應育ち”左腕・荒井駿也
逆境こそ最高のステージだ。慶大出身の左腕、荒井駿也投手は今季から香川オリーブガイナーズでプレーする。又吉克樹投手(元ソフトバンク)ら、2016年まで当時最長の11年連続のNPB選手を輩出したが、2023年に前期・後期ともリーグ最下位へ沈むと、2025年後期まで6期連続で4位。泥沼から抜け出せない状況も、「(不安は)ありません。自分が勝たせれば関係ないので」と語り、口角を上げた。
埼玉・所沢市出身の荒井は、幼いときは同じ左腕で当時西武に在籍していた菊池雄星投手(エンゼルス)に憧れた。中学時代には硬式野球チーム「東村山中央ボーイズ」で腕を磨き、3年時に世界大会へ日本代表として出場した。その後は、慶応高、慶大と進んだ。
2年春にリーグ戦デビューを果たし、4年間で計12試合に登板。1勝1敗、防御率4.08の成績。しなやかなスリークォーターから放つ最速145キロの真っすぐと多彩な変化球が持ち味。しかし、大学4年時のNPBドラフト会議では指名漏れとなった。
「大学4年生の春の段階ではかなり成績も良かったので、このままいければ(NPBからのドラフト指名は)何パーセントの可能性があるんだろうなと思っていたんですが、その矢先に怪我をしちゃったんです。大学1年のときにも怪我に泣かされたので、まずは怪我しないための工夫と体づくり。フルシーズン戦える体でアピールしていきたい」
四国アイランドリーグplusのこれまでの歴史においては珍しい“慶應育ちの超エリート”である荒井は、穏やかながらもポジティブなオーラをまとう。大学のチームメートが大手企業から内定をもらう傍で、かつては「回り道」と言われた独立リーグへの挑戦を決断したことに、不安はなかったのだろうか。
野球でご飯を食べるために…チームの暗黒期脱出、ドラフト輩出を背負う
荒井は少し頬をゆるませ、「みんな良い企業に就職が決まって、さすがだなとは思うんですけど、僕の中では野球でご飯を食べていきたいって気持ちが強かったので」。野球で生計を立てられる実力や人間性かどうかを、自己評価だけでなく「第三者からの意見も欲しかった」とさまざまな人に相談した。1年でも早くNPBへの入団を勝ち取り、大企業の社員になった同世代に追い付くために、社会人野球でもなく独立リーグを選んだという。
チームは、2025年はチーム打率、チーム防御率ともにリーグワーストを記録した。前期には20連敗を喫するなど、悪い流れを立ち切れない。そのようなチーム事情も荒井はNPB入りへのチャンスと捉えている。
「急に順位が上がっているのなんで? ってなり、それで僕を知っていただければ。(逆境こそ好転の原因が)認知される機会が増えるんです。それで売り込むことができる。僕が勝たせれば、必然的に香川の順位があがって、プロ輩出も久しぶりにあるかもしれない。それが僕であればと思っています」
チームの復活はファンの願いでもある。記者も香川県出身で、そんな日を待ちわびる1人だ。「どうして荒井投手は『僕が勝たせる』とそこまで強く思えるのか?」と問うと、左腕は間髪入れずにこう答えた。「できると思うからです」。まっすぐな視線は、20分間の取材中、一度も逸れなかった。王者奪還とドラフト指名への決意はそれほど揺るぎない。
(喜岡桜 / Sakura Kioka)