WBC米国代表は本当に史上最強か? 「最弱」だった先発陣が一変…過去5大会と徹底比較で明らかになる“リアル戦力”|DATA INSIGHT

  • 村田洋輔 2026.03.01
  • MLB
ポール・スキーンズ、タリク・スクーバル、アーロン・ジャッジ(左から)【写真:ロイター】ポール・スキーンズ、タリク・スクーバル、アーロン・ジャッジ(左から)【写真:ロイター】

総合指標「WAR」の平均値で米国代表のメンバーを過去5大会と比較

 2026年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)米国代表は「史上最強」との呼び声も高い豪華なメンバーが揃った。主将アーロン・ジャッジが率いるロースターはネームバリューだけでなく、実際に残したスタッツの面でも「史上最強」なのだろうか。米データサイト「FanGraphs」が算出している総合指標「WAR」を用いて検証してみた。

 WBCのロースターは2006年と2023年以降が30人、2009年から2017年までの3大会は28人だったため、単純にWARの合計値で比較することはできない。ここではWBC開催前年のシーズンに記録したWARの平均値で各大会の米国代表のロースターを比較する。なお、投手は投手WARのみ、野手は野手WARのみを集計対象としている。

 まず野手だが、今大会の米国代表は野手WARの平均値が「5」の大台に乗った(平均5.0)。ジャッジ(10.1)、カル・ローリー(9.1)、ボビー・ウィットJr.(8.0)の3人がメジャー全体のトップ4にランクインし、平均値を大きく引き上げている。ピート・クロウ=アームストロング(5.4)とバイロン・バクストン(5.0)も5以上のWARを記録。WARが3に届かなかったのは、昨季途中にデビューした有望株ロマン・アンソニー(2.7)とベテラン一塁手ポール・ゴールドシュミット(0.8)の2人だけであり、オールスター級の選手がズラリと並ぶ豪華布陣となった。

 過去の米国代表の野手陣では、野手WARの平均値が「4」を超えた大会が3度ある。アレックス・ロドリゲス(9.1)、チェイス・アトリー(7.2)、デレック・リー(7.0)ら強力打線で挑んだ2006年の第1回大会は「4.4」、ブライアン・マッキャン(8.3)、チッパー・ジョーンズ(7.1)、デビッド・ライト(7.0)ら好選手を揃えた2009年の第2回大会は「4.7」、そしてノーラン・アレナド(7.2)、ゴールドシュミット(6.8)、JT・リアルミュート(6.7)、トレイ・ターナー(6.4)、ムーキー・ベッツ(6.0)、マイク・トラウト(6.0)ら超豪華布陣を擁し、大谷翔平に「憧れるのをやめましょう」と言わしめた前回大会は4.6だった。

 ちなみに、米国代表が唯一WBC優勝を果たした2017年の第4回大会の野手WARの平均値は「3.6」。バスター・ポージー(6.7)、アレナド(6.0)、イアン・キンズラー(5.4)、クリスチャン・イエリッチ(5.3)らが目立つ程度で、6大会中「最弱」の野手陣だったが、初優勝という最高の結果を出した。

先発4人を除いた投手陣のWARも今大会がトップ

 投手に目を移すと、今大会の米国代表の投手WARの平均値は「2.9」で過去最高。直近4大会はいずれも投手WARの平均値が「2」に満たず、ドントレル・ウィリス(6.5)、ロジャー・クレメンス(6.0)、ジェイク・ピービー(5.4)の強力3本柱を擁した2006年の第1回大会がこれまでの「最強投手陣」だった。2009年の第2回大会はロイ・オーズウォルトの3.7がトップ、優勝した2017年の第4回大会はタナー・ロアークとマーカス・ストローマンの3.3がトップ、決勝に進出した前回大会に至ってはメリル・ケリーの3.2がトップであり、第2回大会以降、米国代表がいかに一流投手の招集に苦戦してきたかがうかがえる。

 今大会で先発を担うと予想される4投手、タリク・スクーバル(6.6)、ポール・スキーンズ(6.5)、ローガン・ウェブ(5.5)、ジョー・ライアン(3.1)の平均値は5.4となり、過去5大会を圧倒している。これまでの最高は2006年の第1回大会の「4.6」。前出のウィリス、クレメンス、ピービーの3本柱にベテラン左腕アル・ライター(0.5)を加えた数字だ。トップの3投手だけを見れば、第1回大会と今大会は互角だが、4人目の先発投手にも実力者を持ってきたところが今大会の米国代表の強さと言えるだろう。ちなみに、第2先発に回ることが予想されるマイケル・ワカ(3.6)やマシュー・ボイド(3.4)はライアンを上回るWARを記録している。

2023年WBC決勝、日本代表戦で米国代表のジェイソン・アダムのもとへマウンドに集まり声をかける選手たち【写真:gettyimages】2023年WBC決勝、日本代表戦で米国代表のジェイソン・アダムのもとへマウンドに集まり声をかける選手たち【写真:gettyimages】

 前回大会の米国代表は「投手が弱い」と言われたが、主に先発を担った4投手、ケリー、アダム・ウェインライト(2.9)、ランス・リン(1.8)、ニック・マルティネス(0.4)の平均値はわずか2.1だった。先発4人の平均値が「3」に満たなかったのは前回大会が初めてであり、むしろこの先発陣で決勝まで勝ち上がったことを称えるべきなのかもしれない。

 先発4人を除いた、その他の投手の平均値も2.0で今大会がトップ。今大会の米国代表は先発4人だけでなく、第2先発やブルペンにも質の高い投手が揃っている。ブルペンではギャレット・ウィットロック(2.2)、メイソン・ミラー(2.0)、デビッド・ベッドナー(2.0)の3人が「2」を超えるWARを記録しており、第2先発が降板したあと、試合終盤の重要なイニングを担うことになりそうだ。

 ここまで見てきた通り、今大会の米国代表は少なくともWBC開催前年のWARを基準とすれば、投打とも「史上最強」のメンバーが揃った。ただし、WARを基準とした際に充実したロースターとは言えなかった2017年の第4回大会の米国代表が優勝を果たしたように、WARが高いことがそのまま勝利に直結するとは限らない。シーズン開幕前の3月開催であるという点も踏まえ、いかに各選手が本来の実力を発揮できるかが重要であることは言うまでもないだろう。

 米国代表に集まったスター選手たちは投打両面で実力を発揮し、「史上最強」であることを証明できるのか。大注目の米国代表の戦いは3月6日(日本時間7日)、1次ラウンドB組のブラジル戦からスタートする。

WBC TEAM USA ROSTER ANALYSIS

WBC米国代表 WAR比較
2006→2026
投手は投手WAR、野手は野手WARのみ集計 / bWAR=Baseball-Reference WAR fWAR=FanGraphs WAR
※1次ラウンド開始時のメンバーが集計対象。大会途中の入れ替えでロースター入りした選手は含んでいない。
2006選手数:30人
野手平均4.4bWAR
野手平均4.4fWAR
投手平均3.0bWAR
P投手 (14名)
bWAR
fWAR
ロジャー・クレメンス 7.8 6.0
チャド・コルデロ 2.0 1.0
ブライアン・フエンテス 2.7 1.5
トッド・ジョーンズ 3.0 2.4
アル・ライター -0.9 0.5
ブラッド・リッジ 2.0 2.5
ゲーリー・マジェウスキー 1.5 0.7
ジョー・ネイサン 2.1 2.6
ジェイク・ピービー 4.6 5.4
スコット・シールズ 2.1 2.2
ヒューストン・ストリート 2.9 1.7
マイク・ティムリン 2.9 1.8
ダン・ウィーラー 2.2 1.1
ドントレル・ウィリス 7.3 6.5
▶ 先発4人平均 4.7 4.6
▶ その他投手平均 2.3 1.8
▶ 投手平均 3.0 2.6
C捕手
bWAR
fWAR
マイケル・バレット 2.0 2.9
ブライアン・シュナイダー 2.0 2.5
ジェイソン・バリテック 3.9 3.5
IF内野手
bWAR
fWAR
デレック・ジーター 3.8 4.4
チッパー・ジョーンズ 4.1 4.9
デレック・リー 7.7 7.0
アレックス・ロドリゲス 9.4 9.1
マーク・テシェイラ 7.2 5.9
チェイス・アトリー 7.3 7.2
マイケル・ヤング 3.2 4.1
OF外野手
bWAR
fWAR
ジョニー・デイモン 4.0 2.7
ジェフ・フランコーア 3.0 3.0
ケン・グリフィーJr. 3.7 2.9
マット・ホリデイ 2.8 2.6
バーノン・ウェルズ 3.2 3.1
ランディ・ウィン 3.7 5.1
2009選手数:28人
野手平均4.6bWAR
野手平均4.7fWAR
投手平均2.1bWAR
P投手 (15名)
bWAR
fWAR
ヒース・ベル 0.8 1.2
ジョナサン・ブロクストン 0.9 2.0
ジョン・グレイボウ 1.9 0.4
ジェレミー・ガスリー 4.1 2.3
ジョエル・ハンラハン 0.8 0.7
ラトロイ・ホーキンス 0.9 0.8
J・P・ハウエル 2.4 1.5
テッド・リリー 4.0 2.9
マット・リンドストロム 1.2 0.9
ロイ・オーズウォルト 3.9 3.7
ジェイク・ピービー 4.0 3.6
J・J・プッツ 0.6 0.5
スコット・シールズ 0.8 0.6
マット・ソーントン 2.4 1.7
ブラッド・ジーグラー 2.8 0.5
▶ 先発4人平均 4.0 3.1
▶ その他投手平均 1.4 1.0
▶ 投手平均 2.1 1.6
C捕手
bWAR
fWAR
クリス・アイアネッタ 3.2 0.6
ブライアン・マッキャン 5.5 8.3
IF内野手
bWAR
fWAR
マーク・デローサ 1.8 4.2
デレック・ジーター 3.0 3.4
チッパー・ジョーンズ 7.3 7.1
ダスティン・ペドロイア 6.9 6.3
ジミー・ロリンズ 5.5 5.0
デービッド・ライト 6.9 7.0
ケビン・ユーキリス 6.3 6.2
OF外野手
bWAR
fWAR
ライアン・ブラウン 4.6 4.5
アダム・ダン 0.8 0.6
カーティス・グランダーソン 3.9 4.1
シェーン・ビクトリーノ 4.4 4.3
2013選手数:28人
野手平均3.6bWAR
野手平均3.8fWAR
投手平均2.1bWAR
P投手 (15名)
bWAR
fWAR
ジェレミー・アフェルト 0.8 0.8
ヒース・ベル -0.4 0.4
ミッチェル・ボッグス 1.8 0.6
スティーブ・シーシェック 1.2 0.8
ティム・コリンズ 1.1 0.8
ロス・デトワイラー 1.9 1.6
R・A・ディッキー 5.7 4.7
ジオ・ゴンザレス 5.0 5.0
ルーク・グレガーソン 1.9 0.7
デービッド・ヘルナンデス 1.6 2.0
デレック・ホランド 1.3 1.5
クレイグ・キンブレル 3.2 3.1
グレン・パーキンス 1.4 1.1
ビニー・ペスターノ 2.4 1.4
ライアン・ボーグルソン 1.9 1.9
▶ 先発4人平均 3.5 3.3
▶ その他投手平均 1.5 1.2
▶ 投手平均 2.1 1.8
C捕手
bWAR
fWAR
J・P・アレンシビア 1.5 0.6
ジョナサン・ルクロイ 3.3 5.6
ジョー・マウアー 4.4 4.6
IF内野手
bWAR
fWAR
ウィリー・ブルームクイスト -0.1 0.6
エリック・ホズマー -0.5 -1.4
ブランドン・フィリップス 4.0 3.3
ジミー・ロリンズ 2.5 4.7
デービッド・ライト 7.1 6.6
ベン・ゾブリスト 5.8 5.7
OF外野手
bWAR
fWAR
ライアン・ブラウン 6.9 6.8
アダム・ジョーンズ 4.1 4.4
ジャンカルロ・スタントン 5.4 5.1
シェーン・ビクトリーノ 3.0 2.6
2017選手数:28人
野手平均3.5bWAR
野手平均3.6fWAR
投手平均1.9bWAR
P投手 (14名)
bWAR
fWAR
クリス・アーチャー 2.0 2.9
タイラー・クリッパード 1.1 0.7
ダニー・ダフィー 4.0 2.9
サム・ダイソン 2.9 1.1
マイケル・ギブンズ 1.5 1.2
ルーク・グレガーソン 0.5 1.1
ネイト・ジョーンズ 2.3 1.8
ジェイク・マギー 0.3 -0.3
アンドリュー・ミラー 3.7 2.9
パット・ニーシェック 0.6 0.5
タナー・ロアーク 5.5 3.3
デービッド・ロバートソン 1.2 1.0
ドリュー・スマイリー 0.1 1.8
マーカス・ストローマン 1.4 3.3
▶ 先発4人平均 3.2 3.1
▶ その他投手平均 1.4 1.2
▶ 投手平均 1.9 1.7
C捕手
bWAR
fWAR
ジョナサン・ルクロイ 3.7 4.4
バスター・ポージー 4.7 6.7
IF内野手
bWAR
fWAR
ノーラン・アレナド 5.7 6.0
アレックス・ブレグマン 2.1 1.3
ブランドン・クロフォード 5.5 4.1
ポール・ゴールドシュミット 4.9 4.4
ジョシュ・ハリソン 1.9 1.9
エリック・ホズマー 1.7 0.2
イアン・キンズラー 5.6 5.4
ダニエル・マーフィー 4.7 4.7
OF外野手
bWAR
fWAR
アダム・ジョーンズ 1.6 2.6
アンドリュー・マカッチェン -0.4 0.9
ジャンカルロ・スタントン 2.4 1.9
クリスチャン・イェリッチ 4.9 5.3
2023選手数:30人
野手平均4.6bWAR
野手平均4.6fWAR
投手平均2.0bWAR
P投手 (15名)
bWAR
fWAR
ジェイソン・アダム 2.7 1.3
ダニエル・バード 3.7 1.8
デービッド・ベッドナー 1.3 1.4
カイル・フリーランド 2.4 2.5
ケンドール・グレイブマン 1.0 0.7
メリル・ケリー 3.8 3.2
アーロン・ループ -0.9 0.3
ランス・リン 0.7 1.8
ニック・マルティネス 1.2 0.4
マイルズ・マイコラス 2.6 2.8
アダム・オッタビーノ 2.3 1.1
ライアン・プレスリー 0.8 1.4
ブレイディ・シンガー 4.5 3.0
アダム・ウェインライト 2.1 2.9
デビン・ウィリアムス 2.3 2.2
▶ 先発4人平均 2.0 2.1
▶ その他投手平均 2.1 1.7
▶ 投手平均 2.0 1.8
C捕手
bWAR
fWAR
カイル・ヒガシオカ 0.6 1.6
J・T・リアルミュート 6.5 6.7
ウィル・スミス 4.5 4.3
IF内野手
bWAR
fWAR
ピート・アロンソ 4.4 3.8
ティム・アンダーソン 1.3 2.2
ノーラン・アレナド 7.9 7.2
ポール・ゴールドシュミット 7.7 6.8
トレイ・ターナー 5.2 6.4
ボビー・ウィットJr. 0.9 2.3
OF外野手
bWAR
fWAR
ムーキー・ベッツ 6.7 6.0
ジェフ・マクニール 5.9 5.5
セドリック・マリンズ 4.0 3.7
カイル・シュワーバー 2.3 2.2
マイク・トラウト 6.1 6.0
カイル・タッカー 5.5 4.9
2026選手リスト
野手平均5.0bWAR
野手平均5.0fWAR
投手平均2.8bWAR
P投手 (16名)
bWAR
fWAR
デービッド・ベッドナー 2.2 2.0
マシュー・ボイド 2.5 3.4
ギャレット・クレビンジャー 1.9 0.7
クレイ・ホームズ 1.9 1.9
グリフィン・ジャックス 0.5 1.7
ブラッド・ケラー 1.4 1.3
クレイトン・カーショウ 1.6 2.5
ノーラン・マクリーン 1.8 1.2
メイソン・ミラー 2.2 2.0
ジョー・ライアン 4.5 3.1
ポール・スキーンズ 7.7 6.5
タリック・スクーバル 6.5 6.6
ゲーブ・スパイアー 1.4 1.7
マイケル・ワカ 2.8 3.6
ローガン・ウェブ 3.8 5.5
ギャレット・ウィットロック 2.4 2.2
▶ 先発4人平均 5.6 5.4
▶ その他投手平均 1.9 2.0
▶ 投手平均 2.8 2.9
C捕手
bWAR
fWAR
カル・ローリー 7.4 9.1
ウィル・スミス 4.5 4.1
IF内野手
bWAR
fWAR
アレックス・ブレグマン 3.5 3.5
アーニー・クレメント 4.3 3.2
ポール・ゴールドシュミット 1.2 0.8
ブライス・ハーパー 3.1 3.5
ガナー・ヘンダーソン 5.3 4.8
ブライス・トゥラング 5.6 4.4
ボビー・ウィットJr. 7.1 8.0
OF外野手
bWAR
fWAR
ロマン・アンソニー 3.1 2.7
バイロン・バクストン 4.9 5.0
ピート・クロウ=アームストロング 6.0 5.4
アーロン・ジャッジ 9.7 10.1
DH指名打者
bWAR
fWAR
カイル・シュワーバー 4.7 4.9

○著者プロフィール
村田洋輔(むらた・ようすけ)
MLBライター兼解説者。1989年生まれ、兵庫県神戸市出身。神戸高校を経て、2012年に東京大学を卒業。イチローのマリナーズ入団から本格的にMLBに興味を持ち、2017〜25年には日本語公式サイト「MLB.jp」の編集長を務めた。Xアカウント

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