成長期の中学生を襲う“異変”「急に球が遅くなって…」 プロも2年苦しんだ生理現象

元ヤクルト・志田宗大氏が中学生に伝えた、成長期に起こる「クラムジー」
野球に限らずあらゆる競技において、成長期の選手や、指導者・保護者が知っておくべき言葉がある。プロ球団にデータ分析システムなどを提供するライブリッツ株式会社の志田宗大さん、久古健太郎さん(ともに元ヤクルト)が2月14日、東京・多摩市内の公立中学校で、同社がアマチュア野球チームに提供する「FastBall for Personalデータ計測サービス」にて選手の計測を行った。現役時代は外野手として活躍し、引退後は「侍ジャパン」スコアラーや中日のアナライザーなどを務めてきた志田さんは、参加した中学生たちに、成長過程で起こる、ある“生理現象”についてアドバイスした。
「急激に身長が伸びたりする中学時代に、いきなり、今までできていたことができなくなる現象が起こります。ジャンプが得意だったのに跳べなくなったり、急に足が遅くなったり。良いボールが急に投げられなくなったり。そういう生理現象が起こることがあるんです」
計測に参加した同市立東愛宕中と落合中の軟式野球部員13人と指導者に、そう語りかけた志田さん。そのパフォーマンス低下に繋がる生理現象を「クラムジー」と説明した。「不器用な」「ぎこちない」といった意味で、急激な身体的成長に運動神経系の発達が追いつかないために起こるものだという。
「もし自分がそういう状態になった時に、がっかりせず、誰にでも起きることなんだと思って練習を積んでいってください。指導者の方に大切なのは、優しく見守ってあげること。下手になったわけではなく成長過程で起こるものです。特に体が硬くなりやすいですから、ストレッチなどを入れてあげると良いと思います」
志田さんがそう伝えた理由は、自身も「クラムジー」で苦しんだ経験があるからだ。岩手・大船渡で過ごした中学時代、身長が伸びた時期に急に投球フォームのバランスが悪くなり、球が遅くなった。「スムーズにパチッと良い球が投げられていたのが、ギッタンバッコンとぎこちなくなってしまった。直ったのは高校(仙台育英)に進学してからで、2年くらいかかりました」。現役引退後に自分で調べ、そういう現象が起こり得ることを知ったという。

野球だけでなく他競技でも起こる現象…大人の「なんでできないんだ」はNG
計測会を企画した東愛宕中の顧問、田中秀周(ひでちか)先生は、「私もクラムジーという言葉は知っていましたが、直接子どもたちに話をしていただいて、『そういう時代になったんだ』と鳥肌が立ちました」と語った。
田中先生が「クラムジー」を知ったのも、過去にそうしたピッチャーが教え子にいたからだという。「入学当初はコントロールが良かったのに、身長が伸びてくると乱れてストライクが入らなくなってしまった。その時サッカー部の顧問の先生に言われたのが、一生懸命教えるよりも、見守っておいた方がいいということでした」。聞けば、サッカーでも同様の現象が起こる選手がおり、ボールを置いて蹴るPKすらゴールの枠に入れられなくなってしまうという。
思うように体を動かせず苛立ち悩む子に、あれこれ言いすぎたり、逆に「なんでできないんだ」などとネガティブな言葉をかけたりしてしまえば、精神的にダメージを受けるのは当然だ。最悪、競技をやめてしまうことにもなりかねない。特に小学校までは上手で周りに褒められることが多かった子こそ、リスクは大きいだろう。
中学生に限らず、早熟な子は小学校高学年、晩熟の子は高校に入ってからと、「クラムジー」に陥る可能性がある時期は個々で異なる。大事なのは、周りの指導者・保護者が、そうした知識を把握しておくことだ。「少年野球の指導者の方たちは、知っておくべき事案だと思います」と力を込める志田さん。最新の知識を学びながら、迷える中学生を優しく導ける大人でありたい。
(高橋幸司 / Koji Takahashi)
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