WBC席巻の中南米野球…“ダイナミックな選手”が育つワケ 運動神経ではない要因

ドミニカ共和国の育成現場を見た専門家らが得た知見とは?
侍ジャパンや米国を破り世界の頂点に立ったベネズエラや、そのベネズエラを予選プールで破り、米国を苦しめたドミニカ共和国など、今年のWBCでも注目された中南米野球の強さ。そこには日本の育成現場が参考にしたい視点が数多く含まれている。型にはめすぎず、子どもたちの可能性を広げるにはどうすればよいのか。小国ながら多くのMLB選手を輩出するドミニカ共和国で得た知見から、日本での育成を見直したという専門家らの意見を整理したい。
・中南米選手のダイナミックなプレーは、どのように生まれているのか。
・日本で一般的な、長時間練習や全体練習が多いことによる弊害とは何か。
・トーナメント戦の“一発勝負”では得られない経験値とは何か。
DeNAの筒香嘉智内野手の兄・筒香裕史さんが代表を務める少年野球チーム「和歌山橋本Atta boys(アラボーイズ)」では、ドミニカ共和国の「挑戦を大切にする文化」を導入している。中南米では整地されていない地面での“球遊び”が当たり前で、イレギュラー打球への対応能力が自然と身に付く。「失敗マインド」を持っていないのが日本との大きな違いで、難しい打球に挑んで捕れなくても「ナイスチャレンジ」と認められるという。チームではリズムトレーニングなど“中南米スタイル”を導入し、自ら体を動かす楽しさを教えながらポテンシャルを引き出している。
群馬・館林市で活動する中学硬式野球チーム「館林慶友ポニー」代表で、トミー・ジョン手術の“権威”である古島弘三さんも、ドミニカ共和国を視察して衝撃を受けた1人。練習風景はまるで「遊んでいるよう」で、基本練習が多いという。楽しみながら個々のスキルを高めることに終始し、日本のように長時間練習での疲労もなく、投球過多による肩肘への負荷も少なかった。そこでチームでは練習の「質」に着目。全体練習で時間をとるのではなく、“3段階キャッチボール”などの独自ドリルで個の技術を伸ばし、しっかり休んで体も大きく育てる、健やかな成長を支える環境作りをしている。
高校野球のリーグ戦「Liga Agresiva」(リーガ・アグレシーバ)創設者である阪長友仁さんも、リーガ立ち上げはドミニカ共和国での経験が礎となったという。同国の高校生年代は3か月で70試合以上をこなすリーグ戦が当たり前で、何度も成功と失敗を繰り返すチャンスがある。日本の高校野球で一般的な“負けたら終わり”のトーナメント戦では、能力を上げる場が圧倒的に足りず、メリットが少ないのではと感じたという。誰もが多くの打席に立てる仕組みで、負けから課題を見つけられる環境を育成年代に整えることは、野球を離れた場所でも生きてくる大切な力になると説く。
中南米選手の型にはまらないダイナミックなプレーは、決して、生まれ持った骨格や運動神経が理由ではないと筒香さんは語っている。伸び伸びとスキルを伸ばし、経験値も増やせる育成環境は、日本野球の素晴らしさをさらに高めるヒントになるのではないだろうか。
・小・中学生年代には失敗を恐れずに挑戦できる、自由なプレー環境を整える。
・成長期には長時間の画一的練習ではなく、個々のスキルを楽しみながら伸ばす工夫をする。
・リーグ戦形式を参考に、高校生年代が“失敗→改善”の経験を積める機会を増やす。
(First-Pitch編集部)
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