ドラ1輩出も「プロ養成所ではない」 練習より勉強優先…“学習塾併設”の日本一チーム

スターゼンカップで優勝を収めた湘南ボーイズナイン【写真:尾辻剛】
スターゼンカップで優勝を収めた湘南ボーイズナイン【写真:尾辻剛】

「スターゼンカップ 第56回日本少年野球春季全国大会」を制した湘南ボーイズ

 野球の練習も大事だが、学業はもっと大事だ。ボーイズリーグ春の全国大会「スターゼンカップ 第56回日本少年野球春季全国大会」は3月31日、東京都大田区の大田スタジアムで中学の部の決勝戦が行われ、湘南ボーイズ(神奈川県央支部)が多摩川ボーイズ(東京都西支部)に4-3で競り勝って初優勝を飾った。

 初回に2点を先制すると、3回にも1点を追加した。4回に3失点して同点に追いつかれたものの、5回に藤崎湊士の右前適時打で勝ち越した。1度もリードを許すことなく初の“春日本一”を達成したチームには、文武両道という強いこだわりがある。

 1999年からチームを率いる田代栄次監督は「ウチはずっと文武両道でやってきています。勉強ができる、できないというのはありますけど、まずは学習に取り組むのが大事」と説明。週2日、3時間ずつ“勉強デー”を導入し「テスト前は勉強中心で、大事な大会以外は土日でも休ませて勉強させています」という。

 グラウンドの横には“学習塾”を併設。英語、数学などの授業を受ける。「あくまで勉強優先です。それができない子は練習をさせない」。学業で脳を鍛えることで、野球の練習にも考えて取り組むようになり、試合でのプレーにも好影響を及ぼす。

 湘南ボーイズはナショナルズ傘下マイナーの小笠原慎之介投手や日本ハムのドラフト1位ルーキー・大川慈英投手ら、多くのプロ野球選手を輩出している。創部38年目の名門チームだが、田代監督は「プロ野球選手が何十人も出るわけじゃない。ウチはプロ野球選手の養成所ではない」と強調。学業優先の意図にも言及した。

「野球を通して何を学んで、いかに社会で活躍できるかを考えながらやっています。野球だけやるのではなく、野球がなくなった時に何も残ってないという状況にはしたくないんです」

 決勝で2安打2打点を記録し、投げても3回無失点でMVPに輝いた今任葵は投打の柱。食事はどんぶり2杯をノルマに毎日4、5食とり、昨夏から体重が10キロ増えて72キロとパワーアップを図る一方、「勉強は嫌いじゃないです」と好きな科目である数学を中心に勉学にも励んでいる。

怪我防止にも細心の注意…整骨院も併設「体に気を使います」

 成長期の中学生を預かっているだけに、チームは怪我防止にも細心の注意を払う。学習塾の隣に整骨院があり、体のケアや怪我した選手のリハビリにも力を入れている。田代監督は「大会が終わるとエコーを撮ったり、MRIを撮ったり、十分に体に気を使います」と説明した。

 整骨院に勤める専属トレーナーは練習や試合に同行。トレーニングやアイシング、突発的な怪我などにも対応する。整骨院と一般の病院が連携して選手をチェックする態勢を整えており、ワールド・ベースボール・クラシックに携わった医師が、チームの選手を「診てくれている」という。

 もちろん、野球に取り組む意識も高い。「選手たちは日本一になりたいと思って、ウチのチームに入ってくる。『全国大会に出る』のではなく『全国大会で勝つ』という意識です」。加えて強調するのが「日本一と準優勝では全然違う」という考え。「準優勝ではなく日本一になるんだ」という思いを植え付けてきた。

 その成果が実り、4年ぶり3度目の決勝進出で春は初優勝。夏の日本選手権を3度、ジャイアンツカップを2度制している名門チームが、初めて春夏連覇への挑戦権をつかみ、文武両道を貫きながら偉業に挑んでいく。

(尾辻剛 / Go Otsuji)

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