少年野球の不協和音は「大人の会話から始まる」 3人の息子が甲子園…父が得た“確信”

野球経験者のパパコーチが貫くべき“立場”とは(写真はイメージ)
野球経験者のパパコーチが貫くべき“立場”とは(写真はイメージ)

上宮高で1993年選抜V…関西外大監督・黒川洋行氏「指導者の文句は言わない」

 少年野球の世界では、ある程度野球を経験した父親が、我が子の所属するチームの「パパコーチ」になるケースは多い。もちろん、元プロや甲子園経験者となれば、周囲から羨望の眼差しを向けられる。しかし、その内実、当事者である父親たちの葛藤は深い。

 2026年4月より関西外大の監督を務める黒川洋行氏もその1人だった。黒川氏は1993年、上宮高(大阪)の主将として選抜高校野球大会で優勝。その後、同志社大、ミキハウス、セガサミーと、アマチュアの第一線で活躍した野球エリートだ。

 ただ、長男・大雅(日南学園-九州共立大-ミキハウス-SUNホールディングスWEST)、次男・史陽(智弁和歌山-楽天)、三男・怜遠(星稜-日体大-セガサミー)を育てる過程で、技術指導以上に自分へ厳しく課した決まり事がある。それは、「指導者の文句は絶対に言わない」ということだ。

「親が指導者の不満を口にすれば、子どもも絶対に言うようになるんです。彼らも多感な時期、試合での使われ方や、打順に関して不満に思うことは当然あったでしょう。ただ、そこは『お前の力不足や』と突き放しました。一緒に文句を言い合ってしまうと、その瞬間に成長は止まってしまうんです」

 グラウンドでは、あえて一歩引いた立場を貫いた。それは親同士の付き合いでも同様だった。監督の指導法に対して不満を漏らす保護者がいれば、負の連鎖を断ち切る役割を買って出た。「親が仲の良い代は、絶対に強いんです。これは多くのチームを見てきた中で得た確信です。チームの不協和音は、まず大人の会話から始まります」。

 ただ、そんな黒川氏も最初から子どもたちに完璧な指導ができたわけではない。大雅を指導する際、「なぜできないんだ!」と頭ごなしに怒鳴ることが多かったという。その結果、失敗を恐れるようになり、深い後悔を味わった。

「自分がある程度上のレベルまで野球をやっていたからこそ、『なぜできないんだ』という基準を押しつけてしまいました。本当にかわいそうなことをしてしまいました。彼が中1のタイミングで私が転勤になっていなければ、おそらく野球を嫌いになって潰れていたかもしれません」

楽天でプレーする次男・黒川史陽【写真:栗木一考】
楽天でプレーする次男・黒川史陽【写真:栗木一考】

3人の息子を指導して気づいた「コミュニケーション」の重要性

 転機は史陽の中学時代。赴任先から戻った黒川氏は、以前と変わらない指導を続けていたが、ついに息子から「もうグラウンドに来ないでくれ」と“三行半”を突きつけられた。

「言い過ぎて、しんどくなったんでしょうね。それから半年間、グラウンドへ行くのをやめました。それでも気になって、全国大会の予選を外野の奥の方からこっそり観ていたのが他の選手に見つかってしまい、その夜に『もう来てええで』と(笑)」

 しかし、この“冷却期間”が父子の関係を変えた。ある時、「教えてほしい」と歩み寄ってきたのだ。この経験を境に「強制」から「対話」へと指導法が変わった。怜遠に至っては、意図的に「放置」し、自ら気付くのを待つ余裕すら持てるようになった。

「『なぜできないんだ』から、『こうしたらうまくいくんじゃないか』といった、プラスの言葉へと変わりましたね。三男に関しては私の前で素振りをしながら、『もっと教えて』オーラを出していました(笑)。こうなれば、親としては勝ちですよね」

 大学生への指導に対しても、まずは「一人一人の性格を知るためのコミュニケーション」を最優先する。それは息子たちと向き合った日々の中で学んだことだ。「もちろん怒らないといけない場面もありますが、それぞれの性格を把握した上で、叱り方を少しずつ変えています。その後は必ずフォローすることも忘れません」。

 自分の子どもを指導する際、つい前のめりになってしまうパパコーチは多いだろう。ただ、黒川氏は「親は黙って外野で球拾いをしているぐらいがちょうどいいんですよ」と笑う。口出ししたくなる気持ちをグッと抑え、陰からそっと成長を見守る。子どもからアドバイスを求められた時こそ、パパコーチの真価が問われる。

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https://first-pitch.jp/article/coaching-methods/20260304/15235/

(内田勝治 / Katsuharu Uchida)

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