開幕から2か月…相次ぐ主力の離脱は「想定はしていましたけど…」
横浜DeNAベイスターズ28年ぶりのリーグ優勝を託された相川亮二監督が、決断の裏側を明かす新連載「ヨコハマ・アイ」。開幕4連敗スタートの苦しい船出に主力の離脱も相次ぎ、46試合を終えて21勝23敗2分けの4位で交流戦を迎える。第1回は、「1番・牧」の再考、野手登板、山本祐大捕手のトレードが発表された日……3試合の裏側に迫る。
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開幕から2か月が経った。今季から指揮を執る相川亮二監督は「1試合1試合、いろいろな充実感があったり、勝ち負けに追われれていたりで、あっという間だなとも思わないし、長いなという感覚もないのが正直なところです」と初めての監督生活に本音を明かす。
「想定はしていましたけど、重なったり早かったなというところはありました」と話すように、筒香嘉智内野手(5月12日に1軍復帰)、牧秀悟内野手、ジョー・デュプランティエ投手、オースティン・コックス投手ら“計算”していたはずの主力が次々と離脱した。
一方で「この時点で自分が考えていた戦力以外を試せた部分もありましたし、選手はチャンスだと思っていい結果を出してくれたことは、チームの底上げの部分ではいい2か月だったのかなと思います」。勝又温史外野手、島田舜也投手、篠木健太郎投手ら若手の台頭は収穫だった。
4月21日、阪神戦(横浜スタジアム)16○9
就任時から掲げていたのが、牧を1番に据えるプランだった。「1番いい打者に多く打席に立たせる」のが意図。牧は3月27日のヤクルトとの開幕戦(横浜)でいきなり初回先頭打者本塁打を放つなど、1番打者として18試合で打率.308、1本塁打、7打点、出塁率は.418を誇ったが、12得点にとどまっていた。そして4月21日阪神戦、今季19試合目にして初めて1番には三森大貴内野手が座り、牧は2番となった。
「まず想定していたメンバーがいなくなったというのが一番(の理由)です。筒香、宮崎(敏郎内野手)、佐野(恵太内野手)というメンバーがいて、初めて自分がイメージしていた打順ではあったので。あとそのときはまだ下位打線が活発ではなかったので、一度見直すタイミングなのかなと。自分の中では『1年間やり通すぞ』くらいの決意を持っていたんですけど、想定していた選手と結果が合わないと感じたタイミングで1番を代えてみてもいいのかなと思いました」
筒香は2日前の19日に上半身のコンディション不良により出場選手登録抹消。中軸を担う大砲不在が打線を組む上で大きな影響を及ぼしたのは明白だった。牧はその後、4月24日の巨人戦(横浜)で右太腿の肉離れにより離脱した。今後チームが“完全体”になったときには、やはり「1番・牧」が理想なのか――。
「そうですね。そこは考えとしては変わってはいないので。今後牧が帰ってきた時に、またそうするのかしないのかは、チーム状況がどうかというのもあると思いますけど」。そう言って指揮官は眼光を鋭くした。
5月1日、ヤクルト戦(神宮球場)5●16
「投手・柴田」のコールに敵地がどよめいた。5月1日のヤクルト戦(神宮)は序盤から大量リードを許す展開だった。5-15の8回、ハンセル・マルセリーノ投手が16点目を奪われ、なおも2死一塁の場面で、相川監督は“野手登板”を選択した。メジャーではよく見る光景だが、日本球界では珍しく、賛否の声が噴出する策でもある。
「僕は決してネガティブなものではないと思っています。野手が投げなくてはいけない試合状況は、チームとしてかなりきついゲームになっているということなので、そこは当然反省しないといけないですけど。あのときはマルセリーノが50球近く(51球)いっていて、あと1個のアウトを何とか取ってもらいたいけどそういう状況になってしまった。1イニングだとまた違うと思うし、(回の)頭からいかせるかといえばクエスチョンですけど」
相川監督の言葉に…マウンドに集まった内野陣驚愕→突如起きた笑い DeNA野手登板の裏側、実は昨季もあった“構想”
当然のことながら、その試合を勝つために全力を尽くす。しかし最大の目標は143試合のシーズンを戦い抜いてのリーグ優勝だ。そのための“最善”を判断した結果。連戦の状況、投げられる野手がいるかどうか、複合的要素が合致すれば、苦しいチームを救うひとつの手になると考えている。
1つアウトを取ってベンチに戻ってきた柴田竜拓内野手を、相川監督は最前線で出迎えねぎらった。「事実、よくないことじゃないですか。でもそういう役割をやってくれて、ほかのポジションでも言えることですけど、投手と野手なんて大きな違いがある中で、柴田という選手が『行きます』と言ってくれたことに本当に感謝しかありません」。ユーティリティプレーヤーとしてチームを支える32歳への思いだった。
5月12日、中日戦(横浜スタジアム)3○1
衝撃的なニュースが駆け巡ったのは5月12日の午前10時半だった。チームの正捕手・山本祐大と、ソフトバンクの尾形崇斗投手、井上朋也内野手の電撃トレードが成立したことが両球団から発表された。同日午後6時から行われる中日戦(横浜)の先発は東克樹投手。山本とは常にコンビを組み、当然この日もスタメンマスクだと誰もが思っていたところだった。
主力の“放出”というチームが揺れかねない一戦で、東は21歳の松尾汐恩捕手とバッテリーを組んで6回2安打無失点の好投。松尾は好リードだけでなく2回に決勝打を放つなど3打数2安打1打点とバットでもヒーローになった。
相川監督にとっても山本はバッテリーコーチ時代から多くの時間を過ごし、ドラフト9位から“成り上がった”姿を間近で見てきた。だから「個人的な感情はある」と言う。それでも「トレードだけではなく人生でいろいろなことが起きて、それでも僕らは試合に行く。言い訳にはできないし、チームとしてやっていく、みんなが決意を持ってプレーしたくれた試合で選手たちが自分の力を出してくれたと思います」と言葉を紡いだ。
今季から勝利した試合後のグラウンド整列の際、相川監督が選んだ“裏ヒーロー”が一歩前に出てお辞儀をする。「ヒーローにはならないけれど、ものすごく大きな役割、仕事をしてくれた選手を選んでいます。試合に出ていなくてもベンチでいいアドバイスをくれたとかでもいいんです」と説明。そんな中、この日選んだのは松尾だった。攻守で輝き、ヒーローインタビューにも選ばれている正真正銘の“表ヒーロー”だ。それでもあえて、正捕手として歩み出した背番号5の背中をそっと押した。
「そういうことですね。急遽先発してなかなかバッテリーを組んだことがない東と組んで、しっかり変わらずプレーしてくれたので」。応えるように、松尾は力強く前に出てスタンドのファンに深々と頭を下げた。相川監督は「もともと頼もしさはあるので、基本的には経験。それは試合に出ることしかない。成功、失敗、いろいろなことを繰り返していくだけです」と言葉に力を込めた。
交流戦のカギは「DH制の試合でどういう戦い方ができるか」
26日からは全18試合の交流戦がスタートする。指揮官はカギとして、パ・リーグ球団主催のビジター試合を挙げる。
「やはり僕らの強みは攻撃力、打力だと思っているので、それを最大に発揮できるDH制の試合が9試合あって、そこでどういう戦い方ができるかが一番のポイントだと思います。その中で食らいついて、守備面、打撃面の状況判断も含めて戦っていければと思います」
上位とのゲーム差を一気に縮める可能性もあれば、離される可能性もある。しかし順位を明確に意識するのはまだ先だという。「本来は9月と言いますけど、8月にどこらへんにいられるか。自分たちがスパートをかけていくタイミングでどこにいるのかが重要になってくるのかなと思います」。シーズンは中盤に突入した。荒波を乗り越え、相川ベイスターズの航海は続いていく。
(町田利衣 / Rie Machida)