日本捕手の基本の構えは「強いストレスに」 MLBでは95%超…世界基準の“片膝立ち”

ドジャースのウィル・スミスは片膝をつけて捕球する【写真:アフロ】
ドジャースのウィル・スミスは片膝をつけて捕球する【写真:アフロ】

2023年からホークスの捕手育成に携わる緑川大陸氏

 野球界の技術や理論は年々、進化を見せている。打撃や投球などの理論が確立され、過去の“常識”は“非常識”と言われる時代になってきた。捕手の技術もその一つだ。2023年からソフトバンクの捕手育成に携わるキャッチャーコーチの緑川大陸さんは、フレーミングだけではない「世界基準の捕手育成」を掲げ、選手たちと向き合っているという。

 緑川さんは大学まで捕手としてプレーしていたが、甲子園出場経験はなく大学でもレギュラーは掴めなかった。だが、メジャーリーグなどで主流のフレーミングを独学するなど、卓越したキャッチング理論と技術はプロの現場でも高く評価されるようになった。

 過去にメッツ・千賀滉大投手やソフトバンク・甲斐拓也捕手(現巨人)の自主トレをサポートしたことで、一気に注目を集め「緑川=フレーミング」の印象を持つ人が大半だ。今でこそ、フレーミングは技術の一つとして認知されているが、以前は「審判を欺く行為」として捉える野球人も多かったという。その懐疑的な見方を変えた1人が緑川さんと言っても過言ではない。

 ソフトバンクで3年目を迎え、緑川さんの指導は次のフェーズに入っているという。

「僕はフレーミングだけをやっているように思われがちなんですけど、正直、今はフレーミングはそこまでやっていません。それはホークスの選手のレベルが上がって、フレーミングに関してはクリアできているからです。多分皆さんが思ってるフレーミングっていうところはもう3周目に入ってるぐらいで、そのフェーズは卒業しています。他から理解されないときもあるんですけど、それぐらいホークスは進んでる感じは正直あります」

キャッチャーコーチとして活動する緑川大陸氏【写真:伊藤賢汰】
キャッチャーコーチとして活動する緑川大陸氏【写真:伊藤賢汰】

世界基準を目指す「捕手革命」、膝を下ろすことで負担を軽減

 現在、最も力を入れて取り組んでいるのが「世界基準の構え」。具体的には膝を下ろした(片膝を立てる)状態でのブロッキング、スローイングだ。昔から日本では両膝を上げる構えが基本とされており、膝を下ろすと「楽をしている」と批判される風潮があった。だが、MLBでは95%以上の捕手が膝を下ろしており、今春のWBCでも決勝ラウンドに進出した8か国・地域の中で、日本以外の7チームの捕手は膝を下ろした構えでプレーしていたという。

「両膝を上げた構えは、体重の7倍の負荷が膝や腰にかかります。その体勢は膝が内側に入り、つま先が外側に向く“ニーイン、トゥアウト”と言われ、スクワットとかトレーニングの動作で言うと膝関節に強いストレスがかかる危険な動きです。これは怪我のリスクが高くなります」

 守備中でも体への負担が大きく、周囲からも「過酷でつらい」イメージを持たれるポジション。そんなイメージを払拭したいと思っていた緑川さんは「楽をしなければいけない」をテーマに掲げ、新たな捕手革命に挑んでいる。その一つの要因は、現在の日本で捕手が「打てないポジション」と捉えられていることだ。

「僕はそれが納得いかない部分があって。メジャーでは捕手でも打てる選手は全然いる。そういう選手がどういうスタイルでやってるか。打てるキャッチャーの100%は膝を下ろしてプレーしてるんです。今の野球では、どれだけ楽をして、バッティングの方でもちゃんと体力を残せるかというのはすごく大事。結局打たなければ試合にも出られないので」

 フレーミングの技術だけでなく、捕手がよりチームの戦力になるために改革を進めている。子どもたちに向けても「捕手をやりたい、カッコいいと言われるポジションにしていきたい」と力を込める緑川さんは、小・中学生のキャッチャースキル向上を目指すイベント「super fun キャッチャー」を開催し、裾野から最新の理論を伝えている。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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