強豪学童が低学年から「球速を測る」ワケ 正しい投げ方が“勝手に身につく”指導法

滋賀・多賀少年野球クラブの辻正人監督…“正しい投げ方”指導の極意とは
走攻守様々な野球の動作を子どもたちに教える上で、指導者がよく頭を悩ませるのが「投げる動作」だ。全身を連動させる繊細な動作だからこそ、一度間違った動きが身につくと修正が難しく、怪我にも結びつきやすい。では、少年野球の指導の最前線では、どのように正しいフォームを身に付けさせているのか。全国制覇を3度達成している滋賀県の学童野球チーム「多賀少年野球クラブ」の辻正人監督に話を聞いた。
園児と1年生の練習で、辻監督はスピードガンをグラウンドに配置し、子どもたちを一列に並べていく。30数人の子どもたちはいわゆる投げる際の“トップの形”を作り、何歩か助走を取ってから全力で投球。辻監督は「40キロ! 48キロ! 55キロ!」と、球速を声に出す。その後、球速が速い順に子どもたちを2チームに分け、別の練習へと入っていった。
球速順に分けるのには理由がある。投げる動きの習熟度、ひいてはその選手の実力を測れるからだ。辻監督は「投げる動きに野球のプレーが凝縮されていると思うんです。だから、球速で大体のレベルがわかるんです」。足の速さなど、様々な数値でチームを分けたことがあったというが「どうもバランスがよくなかった」と振り返る。
速い球を投げるためには、全身を連動させる必要がある。前足で踏み込み、下半身と上半身が回転し腕がしなり、全体重が指先に乗ることで投げられる。
この複雑な動きを幼少期からできる子は体の使い方がうまく、他のプレーの上達も早い。そのために必要なのが、正しいフォームを幼少期のうちに固めることだ。「投げられる動作で投げているから、球も速いしコントロールもいいんです」と辻監督は続けた。
そのために、先述した計測の前にはトップの作り方から腕の振りまでを、辻監督が一つずつ指導する。「大を作って、Sを作って、ドーン!」と、威勢の良い声で実演し、子どもたちも笑顔で動きを繰り返していた。

子どもたちの意欲を掻き立てる“数字”…勝手に「正しい投げ方」が身につく
子どもたちの球速を測るのには、別の効果もある。城貝康弘コーチは「球速とかタイムを測ると、子どもたちはそれぞれ反応があるんです。『もっと速く投げられるのに』って言う子もいますし、意外に速かったと驚く子もいます。子どもたちが、じゃあ次はどうしたらいいかなと考えると思うんですよね」。
具体的な数字で、子どもたちのモチベーションや競争心を刺激する。子どもたちはどうすればもっと速く投げられるかを試行錯誤し、指導者は正しいフォームを教え、自然に身に付けていくサイクルができあがる。
子どもたちと野球を楽しみながらも、将来生きる技術を授け、強いチームを育て上げていく。丁寧な投げ方指導に、辻監督の指導哲学が詰まっていた。
(磯田健太郎/Kentaro Isoda)
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