チェコで突然だった“1か月” 野球を始めて初の体験…40歳で得た「大きな財産」|荻野貴司のチェコ通信〜Hra!〜#5

チームメートと一緒に出掛けたレストランで…積極交流は継続中!【写真:本人提供】チームメートと一緒に出掛けたレストランで…積極交流は継続中!【写真:本人提供】

荻野貴司が届ける連載・第5回…随所で感じる日本とチェコの野球観の違い

 40歳にして海外、それもチェコで野球人生を歩み続ける決断をした荻野貴司外野手。国際大会で存在感を強くするチェコ野球を肌で感じながら、言葉も文化も違う異国で経験する“初めて”の連続を自身の声でお届けする「荻野貴司のチェコ通信〜Hra!(フラ!)〜」。

 第5回は、開幕からの3か月間で感じたチェコ野球の特徴や自身に起きた変化、またシーズン真っ只中での1か月間の“代表休み”やチームメートとのキャンプ体験など、いくら聞いても飽き足らない様々なトピックスをお届けする。

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 日本の皆さん、こんにちは! 前回のチェコ通信からアッという間に1か月。この間も報告したいことが球場内外で山積みとなりました(笑)。まずは球場内=野球のことからお話ししましょう。

 5月の「ベースボール・チャンピオンズリーグ・ヨーロッパ・グループステージ」では、無事にファイナルステージ進出を決めましたが、国内のエクストラリーガでは10連勝のあとに5連敗(引き分け1をはさむ)。同じブルノを本拠地とするフロシ・ブルノに首位を奪われ、さらには宇草孔基選手のいるコトラシュカ・プラハにも抜かれ、3位となりました。

 チーム状況が急転した理由はいろいろありますが、一番大きかったのはベネズエラ出身の助っ人2選手の離脱でしょう。打線の中軸を担っていたホセ・コリナ、そして先発として安定の投球を続けていたアリアンヘル・ロペスの2選手が退団してしまったのです。詳しいことは分かりませんが、どうやら契約の問題のよう。投打の柱が欠ければ、チーム状況も傾きます。

 そして同じ頃、フロシやコトラシュカには若手選手らが加入。新戦力が加わったチーム、主力が抜けたチームの勢いの差が、そのまま勝敗に現れました。少し嫌な流れだな、と思っていたところでしたが、なんとエクストラリーガでは6月23日から7月16日までシーズンが一時中断することに。ドラツィにとっては「恵みの休み」になるかもしれません。

チームメートと一緒にキャンプに出掛ける貴重な体験も【写真:本人提供】チームメートと一緒にキャンプに出掛ける貴重な体験も【写真:本人提供】

チェコ代表の活動でリーグ戦が約1か月間中断

 そもそも、この時期になぜ1か月も休みが入るのか?

 開幕当初の予定では6月28日まで試合があり、そこから2週間ほど休みになっていました。が、急遽、チェコ代表チームが26日からハーレム・ベースボール・ウィーク、7月4日からはプラハ・ベースボール・ウィークへ出場することになり、日程が再調整されて約1か月の“代表休み”となったようです。

 この“代表休み”の間にチームの立て直しを図りたいドラツィですが、首位の座を追われた後もチームに焦りは感じられません。どうやら、リーグ優勝の捉え方が日本とは少し違うようなのです。エクストラリーガで最高の栄誉は、チェコシリーズに勝って年間チャンピオンになること。そのためリーグ優勝をしなくても4位以内に入り、プレーオフに出場できればいいというわけです。考え方としては、ワールドシリーズ制覇を目指すメジャーと似ているのかもしれません。

 日本でも2004年にパ・リーグでクライマックスシリーズ(CS)が導入され、プレーオフが定着しましたが、それでもやはりレギュラーシーズンを制することが重要視されています。僕自身、ロッテではリーグ優勝に対して強い思いがありましたし、2010年にリーグ3位から日本一となった“下剋上”を経験しても、やはりリーグ優勝をしていないことに、少し据わりの悪さを感じたこともありました。ただ、ここはチェコ。チェコ野球の価値観に染まってみようと思います。

初対戦の投手ばかりのチェコでは、打席での感覚を大切にする原点に回帰【写真:本人提供】初対戦の投手ばかりのチェコでは、打席での感覚を大切にする原点に回帰【写真:本人提供】

久しぶりに味わう“感覚”だけが頼りの打席

 ここまでの3か月、その他にも同じ「野球」とはいえ、日本とチェコの“違い”を感じる場面がありました。例えば、投手が牽制球を投げる場面。ボールを投げるタイミングやテンポが、日本とは微妙に違うのです。僕は盗塁する時、投手の身体のどこか1点を見るのではなく、投手の姿を含む風景全体をボンヤリと目に入れ、わずかな揺れや変化に反応し、盗塁するか、帰塁するかの判断をします。判断基準はこれまでの経験が基礎となっているわけですが、チェコではその感覚に微調整が必要となりました。

 打席での感覚も同じです。プロとして16年もプレーしていれば、日本で初見の投手はほとんどいません。また近年、データを使った投手対策が主流になったこともあり、ある程度のイメージと対策を頭に入れてから打席に立つようになっていました。でも、チェコでは対戦する投手はすべて初めて。ビデオもデータもないので、頼りになるのは打席に立った時の自分の感覚のみ。1球1球積み重ねながら攻略法を探るわけですが、じつは僕はこの作業が楽しくて仕方ありません。

 選手を理論派、感覚派に分けるとしたら、僕は間違いなく感覚派です。事前の情報なしに投手と対峙し、本能的な反応や動きを重ねながら攻略するのが得意。瞬時に反応できる身体であるためにも“キレ”が大切になるというわけです。開幕間もない頃はキレが出ずに苦労しましたが、徐々にその感覚も整ってきたように思います。

 自分の感覚のみを頼りに打席に立つのは、本当に久しぶりのこと。昨年までとはひと味違った頭の使い方をするので、そういった意味でも新鮮な勝負の楽しみを味わえているのが嬉しいですね。とはいえ、新たな環境で頭も身体も少し疲れが溜まっているのは事実。この思いがけない“代表休み”を有効に使って、リフレッシュしたいと思います。

キャンプではチェコの自然に触れる機会も【写真:本人提供】キャンプではチェコの自然に触れる機会も【写真:本人提供】

チームメート8人で出掛けたキャンプ体験

 それにしても、小学生で野球を始めて以来、6月から7月にかけて1か月も試合がなかったことはありません。ボーナスのような時間ができたわけですが、せっかくなので家族と近隣の国へ旅行しようと話しています。もちろん、計画を立ててくれるのは妻ですが(笑)。日本では当然、息子が夏休みでも一緒に旅行することはありませんでした。チェコに来たことで、野球をしながらも家族と過ごす時間が増えたことは、本当に良かったと思います。

 チームメートにも恵まれました。先日は主将のヤクブ・ハイトマールに誘われて、選手8人でブルノ郊外の森へキャンプに行ってきました。8人のうち6人が自転車でやってくるカジュアルスタイル。もちろん、年長の僕は車で移動です(笑)。みんなはテント持参でしたが、僕は持っていないのでマーティン・カラベックのテントに居候。キャンプ場近くのバー/レストランで、外が明るいうちから大いに食べて飲んで、気がつけば時計の針は深夜を越えていました。

 キャンプ場に戻った後はたき火を囲んでソーセージを焼き、ビールを1杯飲んで終了。居候の身で大きなことは言えませんが、カラベックのテント、大人2人で寝るには少し小さく(笑)。それでもチームメートと貴重な経験を分かち合えたことは、僕の人生にとって大きな財産となります。

 日本人バイオリニストの後藤博亮さんが所属するブルノ国立フィルハーモニー管弦楽団の演奏会に出掛ける機会にも恵まれました。初めてのオーケストラ演奏は迫力があり、休憩時間にはワインやシャンパンを楽しむヨーロッパ流で優雅な気分に。それにしても日本からスーツを持ってきて良かったです。周りはみんな正装で、とてもジーンズでは出掛けられない場所でした(笑)。

 さて、7月には「おぎさんぽ」のチェコ編が開催されます。日本から11人が参加してくださるとのこと。皆さんの到着を待ちながら、チェコの夏を楽しみたいと思います。それでは、また次回。

荻野貴司のチェコ通信〜Hra!〜

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