社会人軟式→豪州→北欧から“斜め上オファー” 偶然の縁から切り拓いた「海外挑戦」

オーストラリア時代の小倉俊治さん(中央の66番)【写真:本人提供】
オーストラリア時代の小倉俊治さん(中央の66番)【写真:本人提供】

スウェーデンのカールスクーガ・バッツでプレーする小倉俊治さん

 海外を渡り歩き、日本人の“選択肢”を広げる挑戦を続ける選手がいる。紹介するのは、スウェーデンのカールスクーガ・バッツでプレーする小倉俊治さんだ。岡山県倉敷市に生まれた現在29歳の小倉さんが、海外2か国でプレーするようになった経緯とは。そして、海外挑戦を夢見るこれからの日本人選手に届ける思いとは。

 幼少期から様々なスポーツに触れる中で野球を選んだ小倉さんは、小学生時代には岡山県大会で一つ歳下の山本由伸投手(ドジャース)と対戦した経験を持つ。高校は春夏通じて甲子園に20回出場している強豪・倉敷工業でプレー。卒業後にはENEOS水島製油所に就職し、軟式野球部で競技を継続した。

 就職後、初めは野球を続けるつもりはなかったという。「高校の先輩が会社にいたので練習に誘われて、成り行きで入った感じでした」。高校までの硬式から軟式に変わったことで、得意としていたフォークの制球がうまくいかず、入社後数年は活躍できずに苦しんだ。

 小倉さんに転機が訪れたのは2020年だった。開催地枠で出場した社会人野球の頂点を争う大会・天皇賜杯全日本軟式野球大会で、トップレベルの投手がカットボールやツーシームなどの小さい変化球で打ち取る投球術を目にし、自身のスタイルをアップデート。エース級の投手に成長すると、2024年には岡山県最優秀選手に選ばれるなど、社会人軟式では指折りの選手に成長した。

 しかし、小倉さんは閉塞感も感じていた。「社会人野球は強豪の顔ぶれが変わりにくくて同じ相手と毎年対戦するので、同じことの繰り返しのような、野球選手としての視野が狭まっているように感じていたんです」。そこで選んだのが更なるレベルへの挑戦だった。2023年WBCで奮闘する姿を見て興味を抱いていた、オーストラリア野球へ挑もうと決意した。

「身一つでオーストラリアのチームに直談判しに行くつもりでした」と明かす小倉さん。思わぬ縁に恵まれた。同じく海外移籍を考える友人と旅行で高知県を訪れた。独学で身につけた英語で外国人と交流する経験をしようと、観光客がよく立ち寄るひろめ市場へ足を運んだ。

 すると、大柄で陽気な外国人の振る舞いに目を引かれた。大きなジョッキを片手に「こんなのジュースだよ!」と談笑する声が聞こえてきた。友人と一緒にその様子をずっと見ていると、そばにいた日本人が声をかけてきた。「あの人誰か知ってる? 阪神にいたラファエル・ドリスだよ」。話しかけてきたのは、高知ファイティングドッグスでチーム強化育成統括ディレクターを務める青木走野さんだった。

 現在阪神に再加入したドリスは、当時高知FDでプレーしており、青木さんはたまたま食事に同行していた。また、青木さんは、かつてオーストラリアに16歳で挑戦した経験を持ち、現在は日本人選手の海外挑戦をサポートする事業を行っている。食事を共にしながら野球の話で盛り上がり、小倉さんが渡豪したいと思っている旨を伝えると、すぐに連絡先を交換。チームを紹介してもらい、2024年の冬からオーストラリアでプレーを始めた。

現在はスウェーデンのカールスクーガ・バッツでプレーする【写真:本人提供】
現在はスウェーデンのカールスクーガ・バッツでプレーする【写真:本人提供】

思わぬ縁に導かれ豪州へ挑戦、思わぬ“斜め上”のオファー

 言葉も文化も違う異国での生活だったが、独学で身につけた英会話と野球の技術でチームへ溶け込んだ。オフシーズンを経て2025年も別のチームでプレーすると、35イニングを投げ防御率1.70と活躍。野手としても打率.250の成績を残した。「初日から、チームメートが握手とか、ハグとか、フレンドリーに接してくれたのをよく覚えてます。受け入れてもらえている感じがして、最初の衝撃でしたね」。

 チームに馴染み、オーストラリアでの生活は軌道に乗り始めていたが、小倉さんに届いたのはスウェーデンのチームからの獲得打診だった。野球とは無縁そうな北欧からの便りに「まさか想定していなかった。全く考えていなくて、斜め上のオファーでした」と振り返る。

 しかし、小倉さんはまたも挑戦を選んだ。「北欧でやっている日本人選手って聞いたことがなかったので、じゃあ僕が行ったらこれからの選択肢が広がるかなと」。2026年4月からカールスクーガ・バッツへの移籍を決断。スウェーデンで野球を続ける毎日だ。

 小倉さんは「日本でプロになれなくても、海外でいい待遇でプレーすることはできます。僕が発信することで海外のプレーに興味を持ってもらって、行動してくれる人が少しでも増えてくれたら嬉しいですね」。説得力のある発信を続けるために、プレーの技術も、SNSでの情報発信も両立させていく。小倉さんの日本人の可能性を広げる旅に、終わる気配は当分なさそうだ。

(磯田健太郎/Kentaro Isoda)

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