尾形&ジェリーもたらした光 転機となった決断…DeNA相川監督が描く“下剋上”|ヨコハマ・アイ#5

DeNA・相川亮二監督が「大きなプラス材料」と挙げた尾形崇斗【写真:加治屋友輝】DeNA・相川亮二監督が「大きなプラス材料」と挙げた尾形崇斗【写真:加治屋友輝】

就任1年目は71勝69敗3分けの3位…続投の来季へ「優勝を達成できる」

 横浜DeNAベイスターズは71勝69敗3分けの3位でレギュラーシーズンを終え、28年連続でリーグ優勝を逃した。相川亮二監督が決断の裏側を明かす連載「ヨコハマ・アイ」の第5回はシーズンを総括。阪神に感じた“強さ”、7月上旬の転機、尾形崇斗投手やヘラル・エンカーナシオン外野手ら途中加入組がチームにもたらしたものに迫る。また10日から始まるクライマックス・シリーズ(CS)の戦いの鍵は――。

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 5日に来季続投が発表された。相川監督は「長い期間リーグ優勝できていないというところは全員で目指していくところですし、任されるのは身の引き締まる思いです。今いる戦力で優勝することは本当に達成できると思っているし、自分次第だとも思う。そこをみんなで達成するために、また来年やっていきたいと思います」と抱負を口にした。

 就任1年目のシーズンは貯金2。最終的な「71勝」は、2025年、2024年と同じ数だった。球団で新人監督が70勝に到達したのは1998年の権藤博監督以来となったが、「結果が何勝何敗とか、そこじゃない。リーグ優勝するかしないかですから。変な話、その数字で優勝できていればそれでもいいんです」と受け止めた。

 6月は4勝15敗と苦しみ、7月2日時点で最大借金15を背負った。現状打破へ、藁にもすがる思いだった。「何が何でも勝たないといけないので、何かにしがみついてでも、といろいろな動きをしました。そんなことでなかなか勝てないですけど、できる限りのことはやろうと思って」と、私生活でも試行錯誤するほど苦難の日々だった。

 そこから7月を12勝9敗、8月を15勝10敗、9・10月を17勝8敗と驚異的な巻き返しを見せた。「若い選手たちが前半戦に経験を積んで、後半戦に自分自身とではなく相手と戦える状況になった結果だと思います。6月の結果を招いたのは自分なのでしっかり受け止めて、そこを打破しようとみんなで取り組んで結果が出たのは、まさに来年にどうすればいいかというところに繋がると思うので、6月の戦いを振り返ったときには“いい経験”として繋げられたと思っています」。若き力が芽吹き、ベテランと融合したチームは強さを増した。

苦しい6月を乗り越え、夏から勢いに乗った【写真:井上学】苦しい6月を乗り越え、夏から勢いに乗った【写真:井上学】

7月上旬に下した“決断”「大きなプラス材料だったのかなと思います」

 CSファイナルステージ進出時のアドバンテージ2勝こそ回避したが、首位の阪神とは7.5ゲーム差をつけられた。セ・リーグ連覇の偉業を成し遂げた阪神は強かった。しかし「差はないと思っている」と言い切る。

「自分たちの野球を1年間徹底してやったというところが(阪神の)強さだと思います。差があるという人も当然いますけど、プロ野球という同じ舞台で戦っている以上、僕はベイスターズに関しては差はないと思っているので。まだ自分たちにないところが、きっとそういうところ。そこを勝敗に変えていくことが自分の役割です。ベイスターズの戦い方は、今まで積み重ねてきたものも、僕になってのものもある。チーム全体でどう戦うかは、選手起用も含めてできなかった部分だと思います」

 転機となる“決断”も下してきた。就任時から掲げていた「1番・牧秀悟」は19試合目で再考した。大きかったのは7月5日のヤクルト戦(神宮)。ショーン・レイノルズ投手を初めてセーブシチュエーションで起用し、来日初セーブを挙げた。そこからは右腕を守護神に据え、62登板で4勝2敗、30ホールド17セーブ、防御率1.59という成績を残した。

新守護神のレイノルズが安定して結果を残した【写真:加治屋友輝】新守護神のレイノルズが安定して結果を残した【写真:加治屋友輝】

「レイノルズを抑えに固定したというところですね。勝ち試合をしっかり締めてもらえるというところで、彼からの逆算ができるようになったというのはすごく大きなことでしたし、内容も本当にしっかりした投球。そこは大きなプラス材料だったのかなと思います」

電撃トレードの尾形が「入ってきてくれたことでプラスのこともたくさん」

 シーズン途中から加わった新戦力たちも、仕事を果たした。5月に電撃トレードで加入した尾形は、同31日から先発ローテーションに入って18試合(16先発)で7勝3敗、防御率3.29。先発で回るのは初めてながら、最後まで投げ切った。

「一度も崩すことなく回ってくれたということが一番大きいことです。ときには早めの降板もありましたけど、しっかりゲームメイクをしてくれたのが先発として一番大事なところ。非常に大きかった投手ですね」と目を細める。また「選手たちにもすごくいい影響を及ぼしてくれていると思うし、彼が入ってきてくれたことでプラスのこともたくさん起きている」と話すように、ストイックにトレーニングする姿などがチームに与えたものは大きかった。

 野手では、6月に加入が発表されたエンカーナシオンが打線を活性化させた。7月2日に出場選手登録されて64試合で打率.293、11本塁打、39打点、OPS.815。愛称「ジェリー」の合流とともに、チームも上昇していった。ここでも指揮官は、野球の技術だけでない貢献を強調する。

「結果も当然ですけど、人間性というか明るさであったり、一番苦しいタイミングで来て、それを吹き飛ばしてくれた選手でもあるので、本当に大きな影響力があった選手の一人ですね。日本の文化をしっかり受け入れて、それでいて自分自身が今までやってきたものも崩さず対応してくれた。日本で活躍するにはたくさん条件があると思うので、それをしっかり持った選手だったと思います」

いざCSへ「あそこに行ったら横一線。リーグとはまた違う戦い」

 10日からCSが開幕し、ファーストステージは東京ドームで巨人と激突する。リーグ3位から日本シリーズ制覇の“下剋上”を成し遂げた2024年の再現を目指す戦いが始まる。

 2024年はディフェンスコーチとして歓喜の美酒を味わった相川監督は「筒香も(4月に米国から)帰ってきて、全員で日本一に向かっていけた年でした。リーグ優勝がダメでも日本一のチャンスがあると、本当に勝ちに飢えていた状態だったと思います。なのでCSもそうですし、順位に関係なく日本シリーズまで行って日本一になれたと思っています」と回顧する。

いよいよCS開幕を迎える。2024年の下剋上日本一を再現する【写真:荒川祐史】いよいよCS開幕を迎える。2024年の下剋上日本一を再現する【写真:荒川祐史】

「勝ちに飢えた」状態は、今も同じだ。「あそこ(CS)に行ったら横一線。1位だ2位だ3位だなんて関係ない。リーグ優勝とはまた違う戦いだと思っていて、その戦いをするだけです。ここで勝った人たちがリーグ優勝とは別で強いんだというのをもう一度示すことができる戦いだと思うので、順位も何もないですよね、あそこの戦いにおいては」。再び台風の目となる準備はできている。

 成し遂げるための「ポイントは投手と守備力だと考えます」。シーズンでともにリーグトップタイ125本塁打、打率.246、同トップ557得点を誇った打力のチームではあるが「点を取らないと勝てないのは分かっていることですが、やっぱり投手力、バッテリー、守備というものが一番大きなポイントになる。失点をさせないことが勝っていく上で凄く重要になるし、その中でどう1点を上回るかという戦いになると思います」と指揮官らしい青写真を描いた。

 シーズンでは巨人、阪神ともに対戦成績12勝13敗と負け越したが、新しい戦いが始まる。最後に笑うために――。相川ベイスターズが短期決戦に挑む。

(町田利衣 / Rie Machida)

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