投球フォームは「逆算で作って」 初心者にも最適…甲子園V腕提唱の“5段階ドリル”

日大三優勝投手・吉永健太朗さんが推奨する「リリースからの逆算」
小学生や野球初心者に投げ方指導をする際、「前足を上げて、ステップして……」と順番通りに動作を教え、いきなりキャッチボールを始めてしまいがちだ。しかし、東京・日大三高のエースとして2011年夏の甲子園で優勝を果たした吉永健太朗さんは、「僕はリリースから逆算してフォームを作っていくことを大事にしています」と語る。“最後の動作”から遡って考えるのはなぜなのか。吉永さんが提案する、ピッチングの基礎を作る「5ステップドリル」と共に紹介してもらった。
小さい子どもへの投げ方指導は難しいという声はよく聞く。甲子園V腕である吉永さんのもとにも、保護者からのそうした悩みの相談が来るという。「僕自身もピッチングについてはたくさん悩んできたので、アドバイスできるのは強みかなと思っています」。そんな吉永さんの助言は、リリースを最優先に教える考え方だ。
「いくら体全体を大きく使っても、体重移動ができていても、リリースできちんと強くボールを弾けないと全ての力が分散してしまいます。逆に、リリースのタイミングさえ合えば、そこから逆算してフォーム全体を決めていくことができます」
そこで推奨するのが、段階を踏んで理想のフォーム作りをしていく「5ステップドリル」。具体的には、次の5つをネットスローで行っていく。
【1】投げる方向に正面を向いて立ち、下半身は使わず、トップを作った状態からリリース。
【2】横を向いて立ち、後ろ足→前足への体重移動を加えて、トップを作った状態からリリース。
【3】投げる腕を下ろした状態から【2】と同様に体重移動をし、トップを作ってリリース。
【4】前足のステップを加えクイックで投げる。ボールを持つ手とグラブを離してから一気に加速して投げに行く。
【5】前足を上げる通常のスローイング。足を下ろし始めた段階で【4】と同様に最速で投げに行く。
いずれにせよ大切なのが【1】の段階だ。耳の横にボールを置いてトップを作り、胸の回転をしっかり使って投げる。肘から先に出て投げる“肘抜け”は、力が抜けるし故障の元にもなるので注意する。腕が伸び切ったところで、強くボールを弾いてリリースするのがポイントだ。

毎日200球、300球のネットスローで思考錯誤した社会人時代
「緩く握ったり、脱力して投げた方がいいという意見がありますが、それだとボールが抜けたり、肘が前に出てしまったりします。逆にリリースが強く弾けるようになるだけで、球速は変わらなくても、球質やボールの“圧”が変わってくる選手もいます」
また、吉永さん自身は、リリースの感覚や球筋を磨くのに「スピントレーナー」という器具も使っていた。かまぼこの板のような器具で、きれいな回転で投げられると、実際の投球でもスピンのかかった空振りを取れるストレートを投げられるようになったという。
「5ステップドリル」は、甲子園優勝の栄光の裏側に合った苦闘の賜物でもある。元々、腕が遅れて出てくるタイプの投げ方だった吉永さんは、進学した早大1年時に大学日本一に貢献して以降、フォームを見失い、社会人・JR東日本時代には右肩の亜脱臼など故障にも苦しんだ。
「テークバックがおかしくなって投げ方が分からなくなり、特にJR(東日本)時代には毎日200球、300球とネットスローをして思考錯誤を繰り返しました。そうした中で、フォーム作りには逆算でステップを踏んでいくのが良いのではと感じ、このドリルに落とし込みました」
初心者指導はもちろん、フォームのバランスが崩れていると感じる小・中学生の基礎の見直しにもお勧めしたいと吉永さん。「いきなり球速を求めるのではなく、適切なフォームを作っていく中で、結果的にパフォーマンスが上がり、球速や制球力が向上するのが理想だと思っています」。不振や故障に苦しむことなく、野球を楽しく継続できる。そんなアドバイスをこれからも続けていきたいと考えている。
(高橋幸司 / Koji Takahashi)
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