小学生の“肘抜け”は「投げる前に原因がある」 股関節周りに生じる弱点「傾いてしまう」

投球動作を指導する理学療法士の谷口修也さん(左)【写真:本人提供】
投球動作を指導する理学療法士の谷口修也さん(左)【写真:本人提供】

スポーツ専門理学療法士・谷口修也さん解説…片足立ち強化ドリル

 少年野球で避けたい肘の怪我は、誤った投球フォームで誘発される“肘抜け”によって引き起こされることが多い。理学療法士・日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナーの谷口修也さんは、「肘抜けは投球動作の最初から始まる」と語る。小学生の肘抜けを防ぎ、正しい投球フォームを身につける指導法とは。

 スポーツリハビリを専門とする谷口さんは、自身も高校まで野球のプレー経験を持ち、普段は福井県内の総合病院で勤務しながら、週末は自身で4年前に立ち上げた学童野球チーム、「福井メディカルベースボールクラブ(FMBC)」で活動する。医療従事者と野球指導者の2つの視点を併せ持っている。

 そもそも肘抜けとは、ボールをリリースする際に肘が先に前に出て、前腕だけで投げてしまうエラー動作のこと。肘への負担が大きく怪我につながりやすい。トップを作る際に肘の位置が肩より低くなってしまうことがよくある原因と言われるが、谷口さんは「もっと前に本当の原因があるんです」と語る。

 本業で子どもたちのリハビリを行うことや、FMBCの活動で多くの選手を指導してきたが、「大元を辿っていくと、最初にきちんと片足で立てていないことが原因であることが多いです。骨盤が軸足側に傾いてしまうことで、前足を踏み出した際に、肘が適切な高さまで上がらないまま腕が振られてしまって肘抜けが起きてしまいます」と、そのメカニズムを明かす。

 きちんとトップを作ることや、グラブ側の手の使い方も重要だが、根本的な肘抜けの改善のために必要なのは、前足を軸足に対して90度になるように上げ、軸足一本できちんと立つ力を身につけること。そこで谷口さんが勧めるのが、中殿筋(ちゅうでんきん)をはじめとした股関節周りの外転筋群を強化し、骨盤を水平を保つ「外転筋力」をつけるトレーニングだ。

 トレーニングチューブを両足首につけ、片足で立つ。そして、浮かせた足を横に開いていく動きを繰り返す。動かす足の外側に負荷がかかっている感覚があれば効果が出ている証拠だ。目安は両足とも10〜15回を2〜3セットほど。チューブを用意できない場合は、横を向いて寝て上側の足を上げ下げし、自体重で行うだけでも効果があると谷口さんは続けた。

 疲れてきたりチューブの強度が強すぎたりすると、足が体の前側に振られ別の筋肉を使ってしまい、効果が薄くなってしまう。真横から後ろ斜め45度の角度を意識して、正しいフォームで開くことや、ちょうど良い負荷のチューブを選ぶことが重要だと注意点を語る。

スポーツリハビリを専門とし、学童チームでも活動する谷口さん【写真:磯田健太郎】
スポーツリハビリを専門とし、学童チームでも活動する谷口さん【写真:磯田健太郎】

小学生に“継続”は難しいが…選手の将来のために真剣に向き合う

 長期的に体を変えるトレーニングは、短い期間ではっきりとした効果は表れにくい。「子どもってボールを打ってどれくらい飛んだか、のような目に見える結果が好きじゃないですか。なのでトレーニングを教えても、途中で続けなくなってしまうこともあります」。

 だからこそ、選手たちの気持ちに寄り添いながら、やる気を引き出すことを心がけている。「最近の子は繊細なので声掛けに悩むこともありますが、いい選手は365日継続する力があるよと伝える時もありますし、やらない理由をコーチングで聞き出すこともあります。性格に合わせて工夫しながらやっていますね」と話した。

 健康に、楽しく野球を続けられる子どもたちを一人でも増やすために、谷口さんの挑戦は続いていく。

(磯田健太郎/Kentaro Isoda)

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