選抜高校野球を制した龍谷大平安 原田監督の男泣きを誘ったサプライズ

いいスパイクだから金具を汚したくない

 21年分の思いが詰まっていた。4月2日に選抜高校野球で優勝した龍谷大平安高校。春38度目の出場で頂点に立った。原田英彦監督の「平安のファンとして本当にうれしい」と声を上ずらせた優勝インタビュー、そして3度宙に舞った胴上げは3塁側アルプス席のファンの心に響くラストシーンとなった。

 原田監督は決勝前夜、「俺は優勝したら、泣くからな」と選手たちに宣言。選手たちは「監督を泣かせよう」を合言葉に戦った。しかし、実際のところは監督の目に涙はなかった。指揮官は「選手たちが淡々とやっているのを見ていたら、何だか泣けなかったんですよね」と冷静だった教え子たちのプレーにただただ引き込まれていた。

 1993年に監督に就任。当初はあり得ない事態の繰り返しだったという。ひとつはスパイク事件。ある雨の日のことだった。

「彼らのスパイクの裏を見たら、金具がないんです。驚きましたよ」

 スパイクの裏はまったくの平坦だったのだ。これでは力が入らないし、スタートも切れない。

「なんじゃこれ? お前、金具ないじゃないか」

 そう問い詰めると「今日、雨が降ってるんで」と生徒から返ってきた。いいスパイクだから金具を汚したくないというのが理由だった。

「お前、何しに来たんだ」

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