「紳士協定」「暗黙の了解」での実施はどうか? 新潟県高野連への提言
方向性は同じ、より密な“キャッチボール”を
新潟県高等学校野球連盟(新潟県高野連)は、昨年12月22日に行われた「NIGATA野球サミット2018」(主催・新潟県青少年野球団体協議会)で春の県大会から1試合100球の投球数制限を発表した。
それを受けて、日本高等学校野球連盟(日本高野連)は20日の理事会で、「今春の県大会での投球数制限の実施」について審議し、春季県大会からの実施については、新潟県高野連に「再考」を申し入れることを決めた。
ただ、サミットでの投球数制限実施の発表が事前に日本高野連にも知らされないサプライズだったため、多少混乱したことは否めない。日本高野連サイドに発表するという事実を知らされたのは、サミット当日の直前。新潟県高野連の杵鞭(きねむち)義孝専務理事から、竹中雅彦事務局長に電話で伝えられたという。
当日は新潟からの依頼もあり、日本高野連の西岡宏堂副会長も出席していた中での突然の知らせに困惑を隠せなかった。「初めて聞かされたことだったので、コメントできなかった」と西岡副会長も語っている。竹中事務局長も、「悪いことではない話なので、もうちょっとうまくできなかったのかな」とこれまで重視してきた都道府県とのキャッチボールがうまくできなかったことを残念がる。
年明けの1月7日午前に日本高野連で杵鞭専務理事から直接事情を聞いたという。この日は事務局の仕事初め。最初の仕事の一つが新潟発信の球数制限だった。
この時のやりとりを竹中事務局長は9日の業務運営委員会後に話している。
「高校野球特別規則に載っていないことをされるのはどういうことですか? と聞き、高校野球特別規則に載っていないのでやっても良いと判断したと回答された。春の大会は当該の都道府県の主催なので、高校野球特別規則に載っていないので、いけると判断をされたそうです。ただ、春季大会も日本高野連公認の公式戦です。これが1年生大会とかなら公認の大会ではないのでわかるのですが、公認野球規則と高校野球特別規則によって公式戦は行われている。規則に載っていないことをやると、各地区がマチマチになるのではないですかと聞きました。例えば大阪は80球、兵庫は120球とか、あるいはウチはやりませんとか。そう(バラバラに)なってしまっては困りますとお話ししました」
さらに「公式戦は公認野球規則と高校野球特別規則にそってやるべきだという考えがある。コールド、タイブレーク、臨時代走などは全部同じ高校野球特別規則で運営している。じゃあ、書いてなかったらなんでもやってもいいの?という話になります。そこは守るべきなのではないでしょうか。実際に春の新潟県大会は北信越大会の予選にもなっている。北信越地区理事の長野県の依田和浩専務理事は一言も聞いてなかったと話しています。その点を含めて、なぜ事前に相談してくれなかったのかとうのはあります」と話した。
このやりとりを聞く限りは、新潟県内だけでなく、中央、各地方の高野連と“キャッチボール”をうまくできていればと感じる。実際にタイブレーク導入の際には、春季地区大会からスタートし、各都道府県とキャッチボールを重ね、アンケートをとったりしながら、順序を踏んで、階段を一歩ずつ上って、全ての大会での実現に繋がった。
やるならば、「タイブレークのように全国統一で同じルールのもとでやるのが理想。そのためには高校野球特別規則に項目を作らなくてはいけないが、今シーズンから載せるのは検討する時間が短すぎる」(竹中事務局長)というのが実情だ。各都道府県の加盟校(硬式3971校、軟式428校)への周知期間も必要になる。
新潟県高野連の発表以降、「うちの県も投球数制限を実施したいと言った都道府県は?」の質問に竹中事務局長は「1つもありませんでした」と会見で答えた。そういった意味でも、今回の有識者会議の発足と1年という期間を設けて検討するということは、うまくいけば来年の高校野球特別規則に何らかの投球に関する項目を設けることに繋がる。新潟県が独自でやろうとしたことを、1年後に全国一斉にスタートする可能性ができたということになるのではないか。
ただ、公式戦の投球数制限だけが、果たして適切なのかという議論にはなるだろう。練習、練習試合ともリンクさせて考える必要がある。個人差もある。完全試合や、ノーヒットノーランといった、投手にとって大きな自信をつける可能性がある試合になった時のことも考えなくてはいけない。例えば球数100とかで制限するなら、高校野球そのものを7イニング制にしたらどうかというのも一案だ。