【高校野球】球場巻き込んだドラマの主役 甲子園の土を持って帰らなかった東邦ナイン
泣いている選手は誰もいなかった―、笑顔で甲子園を去った東邦ナイン
「夢のような感じです。スタンドの方々がタオルを回している。人生であり得ない光景だと思います」
14日の2回戦、八戸学院光星(青森)戦。東邦(愛知)の主将で4番の藤嶋健人投手はベンチから球場を見渡したという。ブラスバンドの音楽に乗せて、自分たちを応援してくれていることに力をもらった。試合は9回に4点差を逆転してサヨナラ勝利。もう1度、甲子園で野球ができる喜びをかみしめた。
そして17日。東邦はベスト8入りをかけて、聖光学院(福島)と対戦した。結果、2-5で敗れた。しかし、8回、9回と逆転劇を望む観客からはまたも同じような応援を受けた。優勝はできなかった。それでも最後まで笑っていた。笑顔で甲子園を戦えた。それは藤嶋のいう「あり得ない光景」の中で試合ができた満足感があったからだった。
試合後、笑顔でグラウンドを去った。誰一人として、甲子園の土を持ち帰らなかった。
選手たちは口を揃えて言った。「甲子園でこのような経験ができたことが幸せ」「満足しています」「土を持ち帰らなくても心の中に残ります」。泣いている選手は1人もいなかった。
土を持ち帰らないということが、東邦ナインなりの、甲子園と応援してくれたファンへの感謝の思いだった。これもまた珍しい夏の一コマとなった。
【了】
フルカウント編集部●文 text by Full-Count