都市対抗野球 JR東が7回一挙5得点で逆転 選手の準備が完璧にできていたワケ
丸子が同点打、代打の新人・柴田が勝ち越し打 途中出場の長谷川が走者一掃三塁打
第90回都市対抗野球大会の2回戦が19日、東京ドームで行われ、JR東日本(東京都)がヤマハ(浜松市)に7-1で勝利した。JR東日本・太田、ヤマハのナテルの両先発の好投で息詰まる投手戦となったが、JR東日本が0-1の7回に一挙5点を奪い、逆転。8回には丸子達也のダメ押し2ランが飛び出し、試合を決めた。絶好機を逃さない勝負強さが各打者にはあった。
1点を追う7回。四球とエンドランによる内野安打で無死一、三塁の同点のチャンスでここまで2打席凡退の5番・丸子。この場面でヤマハは強力なセットアッパー、変則左腕の九谷青孝投手を送ってきた。
当然、ここは三振狙いで外の変化球攻めが予想できた。名門・早稲田大では4番も務めた強打者でも、1点が欲しい場面ではセーフティーバントも辞さない覚悟は常に持ち、取り組んできている。堀井哲也監督も丸子のその野球観を知っていた。指揮官は打席に入る前の丸子に声をかけた。
「どうするか?」
丸子も悩んだ。しかし、堀井監督は考えを伝えた。
「ここはお前に任せたよ」
短い言葉に、小技という選択肢は丸子の頭からは消えた。外の変化球に苦しみながらも最後までくらいついた。フルカウントからの7球目。丸子は「三振を取ってくる場面だったので、一、二塁間を狙うイメージでした。思い切っていきました」と外の変化球にくらいつき起死回生の同点右前適時打。これで勢いがついた。
1死満塁となったところで、堀井監督はまだ1年目の柴田紘佑捕手を代打に送った。これが見事にはまった。九谷の後を受けたヤマハの150キロ右腕・堀田晃投手から勝ち越しの中前適時打。指揮官は「1回戦で堀田君を見た時、このボールを打てるのは柴田(紘)しかいないと思って、今日まで練習させてきました」と思い切りの良さ、スイングの速さを買って、勝負手に出たことを明かした。速球に負けないバッティングで試合をひっくり返した。
とどめは途中出場の長谷川拓真だった。6回に代打で中前打を放ち、迎えた第2打席。2死満塁で心は燃えていた。長谷川は「監督から初戦(ヤマハ戦)はいいところでの代打でいくと言われました。正直にいうと、スタメンで出たかったんです。でも、期待してチャンスに送り出してくれるんだと思って、準備だけはきちんとしていきました」。
チーム一のムードメーカーは、一番、盛り上がる場面を逃すはずがない。グリーンに染まったJR東日本のスタンドからはチャンステーマが流れ、奏でるメロディーに乗って、思い切ってスイングすると、右中間を破る走者一掃の三塁打。スライディングもガッツポーズも決まった。
8回には丸子が左方向への流し打ちでスタンドに運ぶダメ押し2ラン。7回以降をドラフト候補右腕の西田光汰投手がきっちり締めた。堀井監督は「選手たちが本当によくやってくれましたよ」とたたえていた。監督がしっかりと考えを伝え、選手たちが自分の勝負所を見極め、そこに向けた準備をできていたのが勝利につながった。
(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)