日本生命ベスト8進出 阿部1失点完投で勝利呼び込む「目標は日本一、一戦必勝」
阿部が150球の熱投、1失点完投でNTT東日本の反撃を振り切る
日本生命が2-1でNTT東日本との接戦を制し、ベスト8に進出。日本生命は初回に4番・越智のタイムリーなどで先制した2点を先発の阿部が9回150球の熱投で守り切った。阿部の失点は5回に喜納に許した右越えソロのみ。完投勝利でチームを勝利に導いた。
最後の打者を空振り三振に打ち取ると、右のこぶしを高く突き上げた。魂を込めて投げ抜いた150球完投勝利に阿部は「投げる前から完投するつもりでいた」と充実した表情を見せた。1点リードして迎えた終盤の7回には1死二塁と一打同点のピンチで前の打席でソロを被弾している喜納と対戦し、ギアを上げた。
全球ストレートで真っ向勝負を挑み、3球三振に打ち取るとマウンド上で大きく吠えた。喜納とは2018年冬に参加した台湾ウインターリーグで社会人選抜チームのチームメイトとして共に戦った仲だ。この日の試合前にも握手を交わし、「よろしく」と健闘を誓いあっていた。2017年の優勝チーム・NTT東を喜納のソロ1本のみに封じ、チームをベスト8に導いた阿部は「強いチームだけど、(優勝するためには)どうせ倒さないといけなかった」と胸を張った。
台湾での武者修行で得たものは大きかった。この日は9回まで2桁奪三振と三振の山を築いたが、その好投の要因はフォークの進化にあった。「カウントを取るフォークと、決めるフォークを投げ分けることができたので、(相手打者が)高めの真っすぐを振ってくれたと思う」と握りを微妙にずらすことで落ち幅を自在に操った。
きっかけは台湾ウインターリーグでの経験だ。リーグには韓国、台湾のプロチームや日本からもNPBの若手選手の混合チームが参加しており、パワー自慢の強打者たちと対戦した。その中で縦に落ちる変化球の有効性を再認識した阿部は、「(それまでは)追い込んでからは振ってくれるけど、追い込んでないときはコース的に見逃されるときもあったので、見逃してもストライクになるように落ち幅を小さくする練習をした」と春先から2種類のフォークの投げ分けを意識してきたという。その結果の9回1失点完投勝利。阿部は「出来すぎですよ」とはにかんだが、十河監督は「阿部が良く投げてくれた」と優勝した2015年の第86大会以来となるベスト8進出の立役者を称えた。
昨年は本選出場を逃し、チームは連続出場が15年で途絶え屈辱を味わった。阿部本人は日本新薬(京都市)に補強選手として参加したが、「日本生命のユニフォームがないことが悔しかった」と1年前の夏を振り返る。阿部はお立ち台に上がると「目標は日本一。一戦必勝で戦っていきます」と白地に赤がよく映えた伝統のユニフォームで黒獅子旗奪還を誓った。
(安藤かなみ / Kanami Ando)