日本が生み出した究極の安打製造機・イチロー 来季の去就はどうなる?
完全なレギュラーとは見られていないイチロー
ヤンキースに居場所はあるのだろうか。米メディアの一部報道によると、10月22日に40歳になったイチローの去就が不透明な状況になっている。チームは来季に向けて外野手の補強に動いており、現地の報道では「安打製造機」をトレードに出すとの見方も出ている。契約はあと1年残っているが、果たして、どのような結末を迎えるのだろうか。
今季は故障者の続出が響き、85勝77敗の地区4位でフィニッシュしたヤンキース。プレーオフ進出を逃したのは2008年以来で、再建を急いでいる。ポストシーズン進出チームよりも一足早くオフに入り、来季の外野の構成や、イチローが置かれている立場について、球団がどのような考えを持っているのかが次第に明らかになってきた。
レギュラーシーズン終了翌日の9月30日、ブライアン・キャッシュマンGMは総括会見を行い、イチローについて言及した。「彼は素晴らしいディフェンダーだ」。まず褒めたたえたのは守備。その後に走力も認めつつ「いい状態であれば、試合を変えられる選手だ」と続けた。日米通算4020安打を誇る打者のバッティングに対する評価が決して高くないことが分かる。
数字で見れば、確かにイチローの打撃は徐々に下降線をたどっている。2010年にシーズン200安打が途切れ、打率も3割を切った。昨年は、7月にヤンキースに移籍して以降の成績だけを見れば打率3割2分2厘と本来の姿を取り戻したが、今年は再び打率2割6分2厘と渡米後では最低となる数字が残った。ただ、これは不規則な起用法が影響しているとも言える。
日米通算4000安打を達成した直後の会見で、イチローは今季の自分の立場について、こう話している。
「ラインナップカードを見るまでは先発としてゲームに出られるかどうか分からない。もちろん、出発前に家で出来ることをやって、ここ(ヤンキースタジアム)に来るんですけど、なかなか安定した気持ちの中でここにくることは出来ない。ラインナップカードに自分の名前があったときに、そこでスイッチが入るというより、入れる行為ですかね。なかなか難しい時間を過ごしています」
ジョー・ジラルディ監督は、イチローを完全なレギュラーとしては見ていなかった。たとえ3安打しても、明らかに調子が上向いていても、次の試合はベンチスタートということが何度もあった。指揮官にとってイチローの状態は関係なく、時には先発が左腕というだけでスタメンから外れた。昨季、ヤンキースに移籍した段階で想像がついていたことかもしれないが、本人が話すように「難しい時間」だったことは間違いない。流れがブチブチと切れてしまう状態では、イチローのような一流選手であってもそう簡単に調子を上げていくことはできないだろう。