【あの夏の記憶】「投げられる状態ではなかった」日大三Vバッテリーが明かす秘話
吉永健太朗投手と鈴木貴弘捕手の思い出に残る1試合、2人が挙げたのは同じ試合
今から8年前の2011年。日大三(西東京)が大会史上4チーム目となる6試合連続2桁安打、4試合の2桁得点をマークするなど、強打で10年ぶり2度目の優勝を果たした。阪神・高山、日本ハム・横尾らが務めた中軸のバットだけでなく、その後、早稲田大でも大学日本一になった吉永健太朗や立教大に進んだ鈴木貴弘のバッテリーの存在も大きかった。大学卒業後、JR東日本に進んだ2人にあの夏の甲子園で思い出に残る1試合を挙げてもらった。
2人が挙げた試合は2回戦。開星(島根)との激闘だった。
1回戦の日本文理(新潟)戦。日大三・吉永のスライダーは切れまくっていた。13奪三振の好投で14-3で完投勝利。好発進!と思いきや、非常事態が起こっていた。
吉永「初戦が終わったあと、爪を割れていて、2回戦で投げられる状態ではなかったんです。変化球が痛くて、投げられなかったんです」
見ると、中指の内側の皮膚がはがれ「ぱっくり割れていた」と言う。
吉永は捕手の鈴木に相談した。2回戦の開星(島根)戦はスライダーを封印することを決めた。直球とシンカーで組み立てることにした。
鈴木「さすがに点数を取られてしまいました。基本的に右バッターに今までシンカーを放ってこなかったので、ほぼ右打者だったため、大変でした」
序盤、味方の強力打線に5点の援護をもらったが、元DeNA・白根ら擁する開星打線につかまり、5回に4失点、6回に2失点と逆転を許した。
鈴木「なので、途中から“スライダー封印”を解きました。痛みがある中、(吉永が痛みを)押しきって投げてくれました」