中日・井端弘和の退団にみるNPBとMLBの違い

井端のケースは日本ならではの事態

 日本ならではの事態と言えるかもしれない。5年契約が終了した井端弘和(38)が、16年間在籍した中日から1億5000万円以上の大減俸を提示され、退団した。自由契約となった名手には複数の球団が興味を示し、獲得に動いている。井端に限らず、近年、年俸1億円以上のベテランが減額制限の40%を超えるダウン提示を受け、大騒動となることが度々ある。

 では、メジャーリーグではどうなのか。海の向こうで、このような事態が起きたというニュースは滅多に聞かない。実は井端のようなケースは構造の違いからあまり起こりえないのだ。

 メジャーでは、契約が切れた選手はすべてフリーエージェント(FA)と表現される。旧所属球団にはワールドシリーズ終了から4日間だけ独占交渉期間が認められているが、これが終わればFA選手は全球団と交渉可能になる。この部分を見ても、契約が満了しても基本的には球団に保有権があり、必要がないと判断された時点で「解雇=自由契約」となる日本プロ野球とは違う。日本のように、他球団と交渉したい場合にFA権の行使を宣言し、所属チームとの契約を解消する必要もない。

 米国でも、FA権を取得するには日本(2007年以降に入団した選手は、出場選手登録が大学・社会人出身で累計7年。高校出身で同8年)と同じように一定の条件がある。6年分、アクティブ・ロースターに入り、メジャーリーガーとしてプレーしなければならない。当然、FAとなっても相思相愛ならば旧所属球団と契約延長に至る。

 そして、仮に単年契約ならば、再び翌年のオフにFAとなる。契約が切れる度に、毎年FAとなる可能性もあるわけだ。1度、FA権を行使すると再取得まで4年かかる日本との大きな違いはここだろう。ちなみに、黒田博樹はヤンキースと2年連続で単年契約を結んだため、ドジャースとの契約が満了した11年オフから3年連続でFAとなっている。

 さらに、球団が保留権を持っている間でも、メジャーでの実働3年を満たした時点で、年俸調停の権利を得ることが出来る。これは、球団の年俸提示に対して不満があった場合に調停を申請し、自らの希望額を要求して第三者の判断に委ねられるという制度だ。球団ともめるという印象が強く、日本では煙たがられる可能性もあるが、米国では選手が持つ当然の権利として認められている。

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