ヤクルトは「僕を育ててくれた場所」 元守護神バーネット氏が古巣に寄せる愛情
球団からの打診に「すぐにイエスと答えたよ。断る理由なんてないから」
ヤクルトの元守護神トニー・バーネット氏が、今季から古巣の編成部アドバイザーに就任した。2010年から15年まで在籍し、クローザーとして活躍した後、2016年からレンジャーズ、カブスでプレー。昨季限りで現役を引退。6日に浦添キャンプに合流したバーネット氏は、数多くのファンに求められるサインや写真撮影に丁寧に応じると「こんなに歓迎してくれるなんて感無量だよ」と顔を上気させた。
6度も春を過ごした場所は、しっかり脳裏に刻まれていた。
「沖縄に着いた途端に、全ての記憶がフラッシュバックのように戻ってきたんだ。まるで、チームを離れていた4年間が、瞬きをする間に過ぎてしまったような感覚がしたよ」
だが、かつてのたっぷりと髭を蓄えた姿はなく、チームのジャージを着て立つ姿は心なしかほっそりと見え、長髪はそのままだがヒゲは綺麗に剃られたニュールックがそこにあった。「2人の娘がヒゲがない方が好きだって言うから」と照れくさそうに剃った理由を明かしたが、スパイクを脱いで心機一転、新たなライフスタイルの始まりにもぴったりハマった。
マイナーでくすぶっていたバーネット氏は、2010年にヤクルトへ移籍してから投手として開花。日本では6年で2度セーブ王に輝くなど通算97セーブを挙げた。2016年にメジャーへ移籍する際には、ヤクルトに譲渡金が入るようにポスティングシステムを利用。ポスティングスシステムでの移籍はならなかったが、レンジャーズでは念願のメジャー初登板を飾り、存在感を見せた。
昨季はメジャーで2試合登板に終わり、ここが潮時と引退を決意。「何の後悔もなかったけれど、今度は何をしようか頭を悩ませていた時に、ヤクルトから電話をもらったんだ」と話す。その内容は「編成部アドバイザーになって、春キャンプにも顔を出してみないか」ということだった。
「すぐにイエスと答えたよ。断る理由なんてないから。ここは僕を育ててくれた場所。ヤクルトが自分のことを気に掛けていてくれたのが、本当にうれしかった。また、こうやってみんなと出会える幸せに感謝しているよ」
現役は十分にやりきったと思っていたが、なじみある浦添の室内練習場で選手たちがウォーミングアップをし、陸上競技場で投手陣のキャッチボール姿を見ると、「体がムズムズしてしまった」と笑う。
「もしかしたら、明日にはグローブを持ち始め、一週間後にはブルペンで投げているかもしれないよ(笑)」
そんなジョークが飛び出すほど、再びヤクルトの一員となれたことがうれしいという。滞在は20日まで予定しているが、シーズン中もチームの勝利のためならどんなサポートも惜しまないつもりだ。自分を育ててくれた場所。バーネット氏にとってヤクルトは、これまで在籍したどの球団よりも愛の深い場所になっている。
(佐藤直子 / Naoko Sato)