折れたバットに新たな息吹 「再利用で上達を」JFE東・今川に届いた相棒
昨年末、とっておいた折れたバットの画像をつけてツイートすると反応が
折れたバットはどこに行くのか――。プロでは折れた箇所をテーピングで巻いて、サインを入れてプレゼントという光景を目にすることがある。箸などに再利用され、販売されていることもある。ただ、ドラフト候補のJFE東日本・今川優馬外野手は昨年1年間で折れたバット25本を前に悩んでいた。「もったいないな」。そんな思いを綴った1枚のSNSの投稿が新たな息吹をもたらすこととなった。
今川は東海大四高(現東海大札幌高)、東海大北海道を経てJFE東日本に入社したスラッガーで、昨年7月の都市対抗野球でいきなり優勝、若獅子賞(新人賞)に輝いた。バッティング動画などをツイッターにアップするなど、社会人選手でありながらフォロワーも約1万5000人。なかなか注目されにくい環境でも野球の楽しさを伝えている。
そんな野球を心底愛する男だから、使い道を失ったバットたちを簡単に捨てることはできなかった。昨年末に折れたバットをキレイに並べた写真に『もったいないなー』とつづった。すると、たくさんの反応があった。
「僕の折れたバットのツイートを見て欲しい方が1000人くらい、いたのですが、折れたバットを捨てるくらいなら私に預けて再利用させて欲しいという連絡を頂きました」
素振り練習道具「カウンター・スイング」の開発と販売をしているサークルワンの代表の野田竜也さんからのメッセージだった。
「カウンター・スイング」とはスイングに初速やしなりを生み出すなど打者のフォームを改善させることが可能になる用具。練習方法に取り入れている高校、大学、社会人、プロも多く、野球界で注目されている道具だ。
今川も大学3年時からこの“アイテム”を愛用しており、その名前はもちろん知っていた。それが今川のバットによってオリジナリティあふれるものとなって生まれ変わったのだ。
本人も驚いた再利用方法。木製バットだって大事な資源であり、一本、一本に作り手や使い手にも思い入れもある。今川は「折れたバットを捨てるくらいなら、再利用して、バッティングが上達するよう使い込んでほしいですね」。道具を大事にする思いが、折れたバットに新しい“命”を授けた。
(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)