野球だけ開催は“ズルい”のか? 「思考停止は教育じゃない」知恵を絞る監督たち
11月に“秋の甲子園”を行う延期案なら、政府の9月入学計画にも合致
新型コロナウイルス感染拡大で、全国高校体育連盟は高校総体の中止を決定。様々なスポーツやイベントが中止や延期に追い込まれるなか、夏の甲子園開催の是非を決める高野連の第2回運営委員会が5月20日に迫っている。このまま春の選抜に続き、夏の大会も中止に追い込まれてしまうのか。高校野球の現場では何とか大会を開催できないかと、連日様々な議論が行われている。
「最近ではほぼ毎日県内の他校の監督さんと電話で話してます。大学野球部時代の先輩後輩など、監督同士のネットワークは意外に広いですから。なかには高野連の評議員をやられている先生もいる。夏の大会に向けての色々な案を出し合って、そういった議論の場に上げるのが今できる精いっぱいですから」とは、東海地方のある監督の弁。現状、具体策として上がっているのが大会自体の延期案だ。
「要は、新チームの始動から神宮大会までをそっくりそのまま3年生の最後の大会にあてるわけです。例年神宮大会が行われる11月を“秋の甲子園”に設定して、そこへ向けて各地で代表校を決めていく。これならまだ半年の猶予があるし、プロの日程にも左右されない。政府の9月入学プランとも合致しますし、新チームの始動は遅れてしまいますが、最後の大会を奪われる3年生よりはまだマシ。夏の炎天下でやらなくていいというメリットもある」(前出の監督)
一方で、延期案のデメリットとなるのが受験勉強の遅れだ。関東のある公立校の教員は「正直、夏の大会があるのかもわからないし『どうせ練習ができないんだから受験に専念します』と言ってきた生徒もいる」と認めつつ「もちろん、そこは個々人の判断。教師として勉強をしてくれること自体は大歓迎です。ただ、最後の大会を終えてから切り替えて、一気に伸びることがあるのが運動部の子たち。切り替えができないまま消極的な理由で、というのは何だかかわいそうで……」と本音を語る。
また、大学で野球を続ける予定の選手にとっても、推薦のためのアピールの場がないというのは大きい。西日本の強豪校監督は「本来なら春の大会や練習試合で色々な大学関係者に見てもらう予定でしたが……。これまで築いてきた信頼関係で、獲ってくれると言ってくれた大学もある。ただ、冬から春、春から夏にかけて一気にレベルを上げて、本来なら希望する大学に行けた可能性もあった生徒にとっては申し訳なさもある」と語る。