ワンバウンドの球は「呼吸」で止める! 元プロ捕手が独自の“ワザ”を伝授
ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手としてプレーした野口寿浩氏が解説
球の後逸は、捕手として最も避けたいところ。Full-Count YouTubeで配信している野球授業の「プロが教えるキャッチャーの練習法」では、第4弾として「ワンバウンドの上手な止め方」を紹介している。講師を務めるのは、現役時代にヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手としてプレーし、2017年から2年間ヤクルトでバッテリーコーチを務めた野球解説者の野口寿浩氏。新型コロナウイルス感染対策として、テレビ通話を通じて解説してもらった。
野口氏はまず、最大の“ご法度”として「ボールが股の間を抜けてしまうことはいけない」と強調。捕逸はピンチを広げて試合を決定づけたり、投手からの信頼喪失に直結する痛恨のプレーに。その原因としては、跳ね上がってくる球に反応しようと体がピョンと飛び上がってしまい、地面と股の間に大きな隙間が生まれることだと指摘した上で、「(体が前方に)倒れこむような動き方ができるようになるといい」とアドバイス。ただ、倒れこむことを意識しすぎると頭の位置が下がってしまい、大きなバウンドの場合に球が頭上を越えていってしまうという注意点も付け加えた。
ワンバウンドした球はミットで捕球できず体に当てて止めるケースもあるが、「大きく跳ね返ってしまうとランナーに進塁を許してしまう」という恐れも。球の勢いを殺すため、体の脱力が重要だといい、「ボールが体に当たる直前に『ハーッ』と息を吐く。そうするとボールの力を吸収してあげることができる」と伝授。若手時代に苦労した経験から自身で考え出した方策で、投球がワンバウンドしそうだと判断した時点で息を吐く準備をしておくことが大事だという。
野口氏は、球を受け止める際の捕手の体を「お皿」と表現。自分の懐を、ボウル状の器だとイメージし、外にこぼさない意識を持つことが上達につながっていく。ワンバウンドになるのは変化球が多いため「サインを出したら、ワンバウンドが来るんだと思って準備をしておく。そして、いざ来た時に慌てない」という心構えも不可欠。跳ね返った球の位置が、自分の半径50センチ程度に収まれば理想的だという。
思うようにグラウンドで練習ができない今、野口氏は自宅でも行える方法を紹介。硬球や軟球が体に当たると、痛みでつい体を硬直させてしまいがちだが、家で柔らかいゴムボールを使って捕球時に息を吐く練習をすることは可能。それに加え、股関節が硬いと地面と股の隙間が広くなるため、念入りなストレッチを風呂上がりなどに継続しておく必要性も説いた。
21年間の現役生活で野口氏がワンバウンドの処理に長けていた選手として挙げたのは、楽天やロッテなど4球団でもバッテリーコーチを務めた田口昌徳氏。日本ハム時代にともにプレーした1学年上の先輩捕手の動きを思い起こし、「すごく柔らかい止め方をされる方。不規則なバウンド以外は、進塁を許すことはなかった」と振り返った。
球の処理が上達すれば、ピンチを未然に防げるだけでなく「ピッチャーの信頼を一番得られやすい」と野口氏。たとえワンバウンドになっても止めてくれるという安心感があれば、投手も迷いなく腕を振って投げることができる。その信頼は、基礎練習の繰り返しでしか得られないだけに「たくさん練習して自信をつけてほしい」と締めくくった。