青木宣親の電撃トレードはなぜ起こったのか
青木のトレードに影響を与えたカノの移籍
日本の野球ファンを驚かせたニュースは、米国内でも大きな話題となった。ブルワーズで一流メジャーリーガーとしての地位を確立した青木宣親内野手(31)が、今月5日にロイヤルズに移籍した。シーズン終了直後からトレード候補と言われてはいたが、「人気者」の行き先として候補に挙がっていたのは、メッツ、タイガースなど。現地報道でもロイヤルズの名前は全く出ておらず、まさに電撃移籍となった。本人も「前向き」と捉えるトレードが成立した背景には何があったのだろうか。
実は、すべての始まりはロビンソン・カノの移籍だった。ヤンキースからFAとなったスター選手は、残留という大方の予想を裏切り、10年2億4000万ドル(約247億円)の超大型契約でマリナーズと合意した。ヤンキースとの残留交渉が決裂に終わったのは、代理人の変更が影響したと見られている。
カノは今年4月に代理人を務めていたスコット・ボラス氏との契約を解除し、ラッパーのジェイ・Zが設立したレーベル・RNCと提携する事務所のCAAと契約した。すると、代理人グループはヤンキースに対して10年3億1000万ドル(約319億)という法外な要求を出した。しかし、ヤンキースは7年1億6000万ドル(165億円)の提示を変えず、交渉は長期戦に。最後はカノ側が少しだけ歩み寄ったものの、ヤンキースは嫌気が指したかのように要求を受け入れず、結局はカノ側にとって、より理想に近い契約内容を提示したマリナーズへの移籍が決まった。
もし、代理人がボラス氏だったら、同じ結果にはならなかったかもしれない。同じように法外な要求をするがゆえに「剛腕」と表現されるエージェントだが、選手のデータなどを駆使して、結果的に大型契約を成立させてきた交渉術には定評がある。一方、CAAがメジャーリーガーを担当するのはカノが初めてで経験の浅さは否めない。また、名門球団との交渉が平行線をたどったのは、初めての顧客で球団との交渉に“負けた”という印象を持たれたくなかったことも影響したのかもしれない。ちなみにヤンキースはカノの残留交渉が難航していた最中に、ボラス氏が代理人を務めるジャコビー・エルズベリーとの7年1億5300万ドル(約157億6000万円)の大型契約をあてつけのように成立させている。