鯉の若武者・遠藤が巨人戦でプロ初完投 専門家が語る「打者は打ちづらい」理由とは
大城に浴びた1発に課題残るも…小林雅英氏が語る「彼の野球人生のターニングポイントになるかもしれない」
■広島 9-2 巨人(2日・東京ドーム)
3年目・21歳の若武者、広島の遠藤淳志投手が2日、敵地・東京ドームで行われた巨人戦に先発し、2失点に抑えてプロ初完投。チームは9-2で大勝し、3連戦3連敗を辛くも免れた。かつてロッテの絶対的守護神として活躍した小林雅英氏が、遠藤の長所と課題を探った。
遠藤は茨城・霞ヶ浦高からドラフト5位で入団。2年目の昨年1軍デビューし、専らリリーフで34試合に登板、1勝1敗1ホールド1セーブ、防御率3.16の成績を残した。今季は開幕先発ローテ入りを果たし、6試合目の先発となったこの日、プロ入り後最多の118球を投げ、5安打5三振2失点で初完投。今季2勝目(1敗)を挙げた。失点は大城、坂本に喫したソロ2発によるものだった。
8回には2死から松原に三塁打され、続くパーラにもファウルで粘られたが、8球目を振らせて三振に仕留め、ピンチを脱出。この時点で9-1と8点リードし、球数は99に達していた。小林氏は「遠藤を先発投手として育てるなら、ぜひ完投させてほしい。僕が首脳陣の立場なら、『3点取られるまでは投げさせる』と決めて、ブルペンにも準備をしてもらいながら続投させます」と力説していた。
実際、遠藤は9回にもマウンドに上がり、先頭の坂本にチェンジアップを左翼席へ運ばれたものの、後続を断ち見事に完投。小林氏は「敵地での巨人戦で完投して勝った意味は大きい。自信になるはずです。今年に限らず、彼の野球人生のターニングポイントになるかもしれない」とうなずいた。
184センチ、78キロの恵まれた体格だが、ストレートの球速はおおむね140キロ台中盤。小林氏は「目を見張るような凄い球があるわけではなく、コントロールもコースいっぱいとはいかないが、低めに集まるのが長所ですね。あの身長から低めに投げれば、角度がつくわけで、打者は打ちづらいです」と解説する。
もちろん、まだ課題もある。味方打線は1回に鈴木の2ランで先制。2回にも西川の適時打で1点を追加したが、なおも続いた無死満塁の好機で菊池、長野、鈴木が凡退。遠藤はその裏、1死から大城に高めに浮いた144キロ速球をバックスクリーン右の中堅席にたたき込まれ、2点差とされた。
小林氏は「味方打線が2回に、もっと点を取れそうな所で取れなかった。ここで投手が考えるべきは、『この回だけはなんとしても0点に抑え、流れを相手に渡さない』ことです。それが投手と野手の持ちつ持たれつの関係というものですから。ヒットや四球ならともかく、1発を打たれやすい所に投げてしまったのは反省点でしょう」と指摘した。
もっとも、遠藤は続く3回の攻撃で、2死二、三塁から自ら中前へ2点適時打。小林氏は「巨人に流れが行きかけていたところで、自ら引き戻して帳消しにしましたね」と笑った。
今後は先発投手として、試合の流れを読みながらメリハリのある投球を求められることになるだろう。強い巨人を相手に1人で投げ切ったことをきっかけに、遠藤がどんな成長を見せるか楽しみだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)