巨人バッテリーの“不用意”な1球 流れ変えた「代打に投げてはいけない球」とは?
巨人で長くスコアラーを務めた三井康浩氏が分析する打者心理
■中日 5-3 巨人(28日・東京ドーム)
巨人は28日、東京ドームでの中日戦で3点のリードを守れず、逆転負けを喫した。5回まで先発の田口が四球などで走者を出しながらも無失点だったが、6回に暗転。代打・堂上に右越え適時二塁打を浴びるなど3失点。7回は2番手の鍵谷が2失点と精彩を欠いた。巨人で長くスコアラーを務めていた分析のプロ・三井康浩氏は巨人バッテリーが代打に出てきた堂上に投じた“不用意な一球”で流れが変わったと指摘。「代打には投げてはいけない」ボールだったと解説する。
田口は毎回走者を背負う苦しいピッチングだった。6回の投げ終わりまで、7四死球(4四球・3死球)と制球が不安定だった。それでも5回まで0を並べていた。しかし、6回に中日打線につかまった。高橋の死球から、この日、3安打の阿部の二塁打で二、三塁。京田の二ゴロで1点を失った。
中日にとってみれば、2点差に迫り、勢いがつきはじめた。郡司の死球で一、三塁となり、投手の谷元に代わり、代打で起用された堂上が初球のストレートをとらえた。甘く高めに入った外角の141キロの直球は右越えの二塁打に。1点差となり、流れは中日に傾いた。三井氏が解説する。
「田口がしっかり投げきらないといけなかったですね。コースが若干甘めでした。スコアラーからしても、あの場面は気を付けたい場面。代打で出てくるバッターの心境を察すると、打ちたくて、打ちたくて、仕方がないわけです。それに初球で、変化球を狙っている人はあまりいないという傾向があります。まずは、真っすぐ一本で打席に入ってきます。それに対して、あまりにも正直に、真っすぐでストライクを取りにいきすぎました」
捕手・炭谷との意図が明確でなかったように映った。リードに定評のあるベテランだったからこそ、考えはあっただろう。スコアラーの観点からすると、代打への初球は、
1.しっかりとコースをついた外角低めでストライクをとる
2.頭にないであろう緩い変化球で誘う
3.直球のボール球で探りを入れる……
この3つのどれかになるという。炭谷の要求は3だったのかもしれない。
「もし、炭谷がボールから入ろうと思ったら、今日の田口の出来から考えると、きちんと外さないといけません。ストレートが低目に集まるようになったのは4~5イニングくらいになってから。大体が高めに来ていました。なので細心の注意を払わないといけなかったと思います」
四死球が多かったため、ストライクにしたい気持ちも理解できるが、もっと低めに投げるべきで、低めにさせるジェスチャーが足りなかった、バッテリーの意識が少し欠けていたのではないかと解説。その後、同点に追いつかれ、7回はその勢いを止めることはできなかった。
「勝ちパターンでしたね。この一球は大きな一球になったと思います。悪いなりに抑えていたのに、最後にああいう形になってしまいましたね」
巨人・原監督は同点まで田口を我慢しながら6回まで投げきらせた。7回以降も打者・井領のカウント2-2のところで鍵谷から大江にスイッチするなど、勝利への執念を見せたが、実らなかった。1失点でしのげば、中川ら中継ぎの勝ちパターンをつぎ込むことができた。制球に苦しみながらも勝ちが付きそうな展開だったが、田口にとって、一球への意識、執念を再認識するゲームになったことを期待したい。