西武GMも認めた“試合を作る能力” セガサミー152キロ右腕が見せた変幻投球
雨でぬかるむマウンド…歩幅1歩縮めてスピードより制球重視に
都市対抗野球東京都二次予選の第一代表決定トーナメント1回戦が23日に行われ、セガサミーの森井絃斗(げんと)投手がJR東日本戦に先発。6回5安打4四死球無失点で試合を作った。
初回、先頭の杉崎に二安を許しいきなり走者を背負ったが、「大丈夫」と自分を落ち着けた。「調子が悪くても、なにか一つは“いいもの”が絶対にあると思っている。そこから試合を作れるというのを自信にしてやっているので」とマウンドでは平静を保った。続く2番・近森を一ゴロ併殺打に打ち取り、ピンチを脱出。その後も毎回のように走者を出しながらも、変化球を低めに集めて要所で併殺を奪う粘り強い投球でJR東打線を封じた。
都市対抗への切符を手にするための二次予選。その初戦のマウンドを託された森井は「最初は力みがあったけど、併殺を取れて運よくいけました。3回からはバランスよく落ち着いて投げることができたと思います」と汗を拭う。この日は試合開始とともに雨が降り始め、マウンドはぬかるんだ状態に。滑る足元を気にした森井は、歩幅を通常より1歩狭めた。「直球のスピードは落ちるんですけど、そっちの方がコントロールできる」。自慢の速球よりも、勝利のために制球を選んだ。
まっさらなマウンドに立つ矜持がある。「ずるずる行くと勝てない。自分がそこを断ち切らないと試合も作れない」と、不調でも切り替えを大事にする。「自分がダメな方に考えるから、ずるずる行く」。前向きに考えるからこそ、試合の中で立ち直れる”いいもの”を見つけることができるという。
森井の高いゲームメイク能力は、スカウトの目にも留まる。西武の渡辺久信ゼネラルマネージャーは「ゲームを作る能力はあると聞いている。途中からよくなっていった」とその修正能力を評価。12球団のスカウトがバックネット裏に勢揃いする中、6回5安打無失点でマウンドを降りた。
チームは8回にJR東打線につかまり、8点を奪われて逆転負け。東京ドームへの切符をかけ、25日から行われる第二代表決定トーナメントへ戦いの場を移す。森井は「自分の持ち味は真っすぐだけど、きょうは強さがなかった。バランスよく質のいい直球を投げれるように」と次戦を見据える。
最速152キロの直球を武器に、スライダー、カーブ、カット、フォーク、ツーシームと多彩な変化球を操る森井。高卒3年目の今年がドラフト解禁イヤーだ。「この予選が一番のアピールの場。抑えてチームが勝てば自然とスカウトの評価につながっていくと思う」とあくまで自然体を貫くが、その目は常に前だけを捉える。チームを勝利に導き、自らもプロの門を叩いてみせる。
(安藤かなみ / Kanami Ando)