【2013年 ダルビッシュ・プレイバック】メジャー最強打線を誇る、タイガース戦後に見せた笑顔の理由
日本のプロ野球では感じられなくなっていた刺激
海を渡ったからこそ感じられる喜びをかみ締めていた。5月16日のタイガース戦に先発したダルビッシュは、マウンド上で何度も笑みを浮かべていた。リーグトップの7勝目を挙げたからではない。8回7安打4失点7奪三振という結果は、今季の右腕の圧倒的な投球内容を考えれば、平凡な部類に入る。では、笑顔の理由は何だったのか。
それは、試合直後に更新されたダルビッシュのブログを見れば分かる。投球内容について嬉々とした様子で振り返った後に「毎回タイガースに投げたいわ(笑)」とつづっている。トリー・ハンター、ミゲル・カブレラ、プリンス・フィルダー、ビクター・マルティネスらを擁し、メジャー最強とも言われるタイガース打線との対戦が楽しくて仕方なかったのだ。日本のプロ野球では感じなくなっていた刺激が、そこにはあった。
象徴的なシーンは、3点を失った3回にあった。昨季三冠王のカブレラに、内角低めへのツーシームを左翼フェンス直撃の強烈なライナーで二塁打にされると、ダルビッシュは思わず笑みを浮かべた。さらに、マルティネスには7球をファウルで粘られた揚げ句、10球目をセンターに運ばれて犠牲フライで3点目を奪われた。
この時は、途中から2人ともファウルの度に顔を見合わせ、微笑み合った。お互いを認めたからこそ生まれた一場面だった。ピンチでフィルダーを敬遠するという珍しい一幕もあった。これもダルビッシュが相手を認めていた証拠と言える。
ちなみに、この試合では相手先発の剛腕ジャスティン・バーランダーがKOされて4回途中に早々に交代。一方、ダルビッシュは7回終了時に球数が115球に達していたが、8回も続投。結局、メジャーでは超異例とも言える自己最多の130球を投げた。
実は、この前日に悪天候の影響で飛行機での移動が遅れ、本拠地アーリントンに到着したのが明け方になるというトラブルがあった。疲労が蓄積しているブルペンを使いづらいという事情があったことも続投の理由の1つだったが、これが後にアメリカ国内で論争を巻き起こし、ワシントン監督は「投げさせすぎ」として猛烈な批判にさらされることになる。
以下は試合後の記者会見。