「マシンガン打線」の生みの親が社会人野球で再出発 43年目のユニフォームに込める思い

プロと社会人の特徴は「下克上」と「上意下達」

 プロと社会人のそれぞれの特徴について、高木は「下剋上」と「上意下達」という言葉で表現する。

 プロの世界は言うまでもなく下剋上の世界。チームメイトでも、ある意味ライバルであり、プロで生き残るために各々が自己責任の中で試行錯誤しながらプレーしている。

「プロは自分がいかにうまくなるか。コーチの力をいかに借りるかも大事ですが、自分でいいものを選んで、いかに取捨選択するかというのがプロの世界ですね。選手は若手のころは素直に頭を垂れますが、実績を重ねると自信もついてきますし、変わってきます。それはそれで成長の形だと思いますけれどね」

 一方、社会人の選手たちはコーチの言葉に素直に耳を傾ける。指導をしっかりと聞き入れ、実行しようとするのである。それは、まさに上意下達の世界だ。

「プロはプロでもちろんいいところはある。レベルの高いところで教える意義もすごく感じていました。でも、少しレベルの下がったところでプロのような高いレベルを目指すことも楽しいですよ。特に社会人野球では選手が素直に色々聞いてくれるだけに、今は責任感が強いですね」

 高木はそう語る。

 特にJR東日本は素晴らしい環境が整っている。選手は午前中に勤務し、午後は練習を実施。終日、練習をする日もある。3月はオープン戦続きだった。千葉県柏市にある練習場はサブグラウンドや室内練習場も完備。そこからバスで15分ほどのところに選手寮もある。非常にきれいな寮で大浴場なども備えているという。

 練習内容も驚くほど充実している。元ヤクルトの安田猛が投手の指導を担当し、打撃面では巨人の片岡治大の実兄、片岡昭吾がコーチを務めている。たとえば、走塁練習を見ても、きめ細かくシチュエーションを設定して行われる。それはプロ球団のファームに比べても遜色ない内容だという。

 片岡コーチを「自分の息子くらいの年齢」と話す高木は、プロを経てきたからといって、決して前に出ようとはしない。あくまでサポート役に徹し、バランスを見ながら指導することを心がけている。そうやって社会人野球の指導者として再出発したばかりの高木が、少しばかり気になっていることがあるという。プロ志望の選手たちにプロ入りを勧めるか否か、である。

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