マリナーズ首脳陣からも絶大な信頼 今季3勝無敗の岩隈久志の凄さとポーカーフェイスの下に宿る強い気持ち
今季初勝利の後、極上の笑顔を浮かべた
だが、メジャーリーガーたるもの、ここでくじけてしまうような精神力は持ち合わせていない。迷惑を掛けたチームに対し、自分ができることは何か。起きたことを悔やむのではなく、どうやって早く復帰するか、復帰した時いかにいい投球をすることができるか、それを考え、取り組むことだ。
「ある程度できあがっていた」という肩の状態を保ち、さらには上げていくようなトレーニングに取り組み、時には拳にタオルを巻いて、マウンド上でシャドーピッチングをした。
ようやく右手中指から固定具が外れた後も、テニスボールのキャッチボールから始まり、野球のボールを使ったキャッチボール、傾斜のない場所での投球練習、ブルペンでの投球練習、打者を立たせた投球練習と、段階を踏みながら、復帰への道を歩んだ。
この間もチームに同行していたのだが、「やっぱり一緒に応援しながら、早く戻ってチームに貢献したいという気持ちでずっといました」という。今でこそ、チームの勝率は5割前後を推移するが、4月は負け越すことが多かっただけに、プレーで貢献できないことが歯がゆくて仕方なかったのだろう。
本来ならば、3~4回はマイナーでのリハビリ登板を行いたかったところだ。キャンプで何もできなかった岩隈にとって、マイナーでの登板=オープン戦のようなもの。通常、先発投手はオープン戦で5試合ほど投げる間に、徐々に球数を90~100球まで上げて、肩の強度を高めていく。だが、岩隈がメジャー復帰を果たすまでにマイナーリーグで登板したのは、わずか1試合で76球までだった。
オープン戦で1度しか投げずに開幕を迎えたようなものだったが、5月3日アストロズ戦では6回2/3を投げて6安打4失点と奮闘。今季初勝利を手に入れた後に、「やっと戻ってこれたっていう気持ちで、すごくホッとしています」と極上の笑顔を浮かべた。