6季ぶりリーグ制覇の早大 選手の能力を引き出した「高校野球流指導」
新監督の指導で才能を開花させた2人の選手が優勝への原動力に
1人目が、扇の要を担った道端俊輔捕手である。
智弁和歌山時代は1年夏から甲子園に5季連続出場。3年夏には高校日本代表にも選ばれ、世代トップクラスの実績を誇るエリート中のエリート。だが、早大入学後は3年生まで正捕手の座を掴めず、苦悩の日々が続いた。
肩の弱さがひとつのネックになっていた。しかし、高橋監督は盗塁を刺すための技術を教え込むのではなく、「ストライクの送球を投げろ」と言い続けたという。ストライク送球さえすれば、相手チームも簡単には走って来られない。シンプルなワードで選手に自信を持たせ、正捕手に据えた。
2人目が、全11試合で4番に座った丸子達也だ。
丸子も広島の名門・広陵で主砲を担い、通算46本塁打をマーク。当時からドラフト上位候補として騒がれた逸材だったが、早大では3年間、代打で14打席に立っただけで通算2安打。長打を狙いすぎるあまり、確実性に欠ける打撃に陥っていた。
高橋監督は鋭い当たりを連発する丸子のフリー打撃を見て、すぐにその才能に驚かされた。そしてこう語りかけたという。
「逆方向に打つのがうまいんだから、試合でも同じように打ったらいいじゃないか。『早稲田の4番だから――』ということを考える必要はない」
長打力を求め、本来の長所を見失っていた大砲をひと言で目覚めさせた。