山崎康、松井裕、大瀬良…優れた投手は先発で使うべきか、抑えで使うべきか
「量の問題」がチームに与える影響
とはいえ、投手を抑えとして起用するとき、先発投手して起用するのに比べ投球回が減るのも事実である。この「量の問題」がどれだけチームに影響を与えるかは、リプレイスメント・レベルという考え方を使って検討されている。
リプレイスメント・レベルは「置き換え可能な最低限の能力水準」という意味だ。ある選手の働きにどれだけの価値があるのかは「その選手がいなかったら起こっていたこと」との比較、つまり置き換え可能な能力に置き換わった場合との比較で計られる。
具体的な数字を使ったほうがわかりやすそうだ。「防御率3.00で180回投げた投手がいる」というだけでは、その働きにどんな価値があるのかわからない。そこで「その投手がいなかった場合」と比較して考えるのである。
上記のような内容で先発を務める投手Aが欠け、代わりに二軍から投手Bを上げてきたとする。この投手Bが防御率5.50くらいで投げてくれたとする。この場合この防御率5.50がリプレイスメント・レベルすなわち置き換えの水準となる。(※1)
同じ180回を投げた場合、投手Aは防御率3.00なので自責点は60点、投手Bは防御率5.50なので110点だ。比較基準を導入することで、投手の貢献度を「その投手が欠けて、最低限の代替投手が投げる場合と比較して、失点を50点少なくした」と評価できるようになる。
こうしたリプレイスメント・レベルを基準にした評価では、登板量が多いほど影響は大きくなる。上記の投手を抑えに回して投球回が1/3になり、仮に同じ防御率で投げたとすると貢献度も1/3の16.7点へと減少するわけで、この観点からは「優秀な先発投手を抑えに回すと、力の劣る投手が多くのイニングを投げる必要が生じる。これはチームに大きな損失をもたらすから、優秀な投手は先発で起用すべきである」という結論が得られるのだ。