ロッテ唐川、怪我を経て掴んだ確信 「試行錯誤の延長線上に今の僕がある」

「一番大事なことはチームメートに信頼をしてもらうこと」

 言葉で表すことはなかったが、強い決意がみなぎっていた。技術面以外にも見直した。ウェートも研究し、自分に合っているトレーニングは積極的に取り入れた。食事もタンパク質を増やして5キロ増の85キロにした。今シーズン、春季キャンプは2軍スタートだったが、自身の中では必ず結果を出す日が来ると確信が持てる充実感があった。だから、焦ることなく2軍で好投を続けながら出番を待った。

 5月6日のオリックス戦(QVCマリン)で今季、1軍初登板を果たすと、5月22日の同カード(京セラドーム)で初勝利。昨年、平均130キロ台後半だったストレートはMAX143キロを記録し、自分を見つめ直した期間に手に入れたものを存分に発揮した。そして8月11日の楽天戦(QVCマリン)。MAX144キロのストレートを軸にカーブ、カットボール、シュート、スライダー、フォークと様々なボールを駆使してイーグルス打線を危なげない投球で完封。5勝目を挙げ、蒸し暑かった夏の夜空に背番号「19」は燦然とした輝きを見せた。
 
「一番大事なことはチームメートに信頼をしてもらうこと。それは試合の中で作り上げていくしかない。先を見るのではなく、1試合、1球を大事にして、信頼を作っていく。先の目標と言うよりは一つ一つが大事になってくる。今はそれしか考えていない」

 飄々とした表情は今もルーキー時代も変わらない。熱く語る方ではないが、その言葉には自信とプライドと負けん気が織り交ざる独特の力強さがある。まだ27歳。怪我を経て掴んだピッチングには絶対的な確信がある。ここからの長い野球人生で、一つ一つと前へと突き進み、素晴らしき新たな物語を見せてくれるはずだ。

(記事提供:パ・リーグ インサイト

【了】

マリーンズ球団広報 梶原紀章●文 text by Noriaki Kajiwara

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