【高校野球】夏の甲子園から捧げる祈り グラウンドにベンチ、室内練習場で願った平和
室内練習場で一人黙祷を捧げた球児、「僕らが後世に伝えていかなくては」
2日前の7日夜、宿舎でのミーティングの前に戦争の恐怖、命の尊厳についての話をした。チーム内には長崎出身の松尾孝太選手(2年)もいた。「毎年、8月9日は学校に登校して、平和集会がありました。長崎で9日は忘れてはならない日。強い思いで試合に臨みたいと思っていた」(松尾)。山梨学院のユニホームを着ながらも、故郷への思いを持って戦っていた。
時同じくして、次の試合に備える横浜高(神奈川)にも同じような思いを抱く選手がいた。2年生外野手・増田珠選手だった。3番打者を任された注目のスラッガーもまた長崎県出身だった。
「8月9日は学校に登校し、被爆者のお墓参りなどをしていました。戦争の背景などについての勉強もしていました。戦争体験者が高齢化している。被爆で苦しんでいる方はいっぱいます。どんな形でも僕らが後世に伝えていかなくてはならないと思います」。午前11時2分。横浜は室内練習場で東北(宮城)との一戦に備えてアップをしていた。時計の針が時刻を指すと、増田は一人、目を閉じて黙祷を捧げたという。
甲子園という場所で交錯した運命。熱い戦いの中で故郷への思いをさらに強くし、自分の役割、使命というものを実感した。それぞれにとって忘れられない夏になった。
【了】
フルカウント編集部●文 text by Full-Count