自分の弱さと向き合った20年 “代走屋”鈴木尚が積み重ねた228盗塁の歴史
代走に「生き残る術」見出したプロ生活
――自分の弱さと向き合う作業は、決して簡単ではありません。
「そりゃ嫌ですよね。でも、毎日結果が出るプロの世界では、避けては通れない。うまく避けたと思っても、必ずまた同じことが起こるんです。それを繰り返して年数を重ねると、なかなか弱さと向き合えなくなってしまう。歳を重ねれば変なプライドも出てきますし、立ち位置も変わってくる。だから、早いうちに自分で向き合って、芽を摘んでおいた方がいいじゃないですか」
――そこに気付くきっかけがあったのでしょうか?
「気付くというより、本当に生きる術がそこ(代走)しかないんで。どんな強みを持っていても、それを生かすには欠点を補わなければならない。毎日その作業の連続でしたね」
――自分の弱さと毎日向き合う。それを20年積み重ねることは並大抵ではできません。
「プロ野球選手だったら当然のことじゃないですかね。野球で結果を残すためには、自分では決められない要素があるけど、決められる要素もあるんですよ。だから、自分でコントロールできる部分は、できるだけ完璧に近づけたい。一生を終える時に人生を振り返れば、野球をしている時間は本当に何分の一。その間は野球のことばかり考えて、野球をやってもいいかなって思っていました」
――身体のメンテナンスにも、相当気を配られたと思います。
「トレーニングにしても身体のケアにしても自己責任になる。僕は若い頃に怪我が多かったので、怪我をするのも自己責任だって感じることが多かったです。野球選手は身体1つ、自分の身体が商売道具。言ってみれば、肉体労働者ですよね(笑)」