ロッテ石川に訪れた「不思議な縁」、WBC出場「高校時代の僕が聞いたら腰抜かす」

WBC出場は「奇跡」、「高校時代のボクが聞いたら腰を抜かす」

 大学で教わった技術に加え、社会人時代はメンタル面を強化した。社会人野球は一発勝負。その中で「最初から全力で投げる」ということの大事さをアドバイスされ、徹底した。初球から最後の球まで悔いが残らないように全力で投げた。マウンドでは「攻める気持ち」を強く意識した。弱気にならない。徹底的に攻める。クールな顔とは対照的な攻撃的ピッチングはこうして生まれた。

 どこにでもいるような普通の野球少年で、自分に自信を持つことも明確な夢を持つことも出来なかった若者はいつしかマリーンズにドラフト1位で指名される大型右腕に成長した。昨年はパ・リーグの最優秀防御率のタイトルを獲得した。そして今年、侍ジャパンの一員に選ばれた。

「第1回のWBCも、第2回も友達とテレビで見ていたのを覚えています。自分がその一員になる日が来るなんて夢にも思っていませんよ。奇跡です。だって、ボクですよ! もし高校時代のボクが、それを聞いたら腰を抜かすと思いますね」

 そう言って背番号「12」は笑った。

 人生の可能性は無限に広がっている。それを誰よりも体現しているのが石川だ。石垣島での春季キャンプでは、マスコミから世界の舞台に関する質問が集中する。あるテレビ局からWBCでの抱負を聞かれた時、悩みに悩んだが、最後はキッパリと答えた。

「世界一の絶景を見たいです」

 大きな夢、明確な目標を持つことがなかった青年が今は、はっきりとした誰よりも大きな目標を持っている。人生とはどう転ぶか分からない。次の世代へのメッセージを込めて『ゴエモン』の愛称でファンに親しまれる男は世界の舞台へと挑む。

(記事提供:パ・リーグ インサイト

【了】

マリーンズ球団広報 梶原紀章●文 text by Noriaki Kajiwara

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