「大変は大きく変わると書く」― ロッテ4年目捕手、無安打記録からの逆襲
ロッテ吉田裕太、傷心を癒した言葉
昨年の悔しさを胸にキャンプに臨んでいる。吉田裕太捕手のプロ3年目となった2016年シーズン。不名誉な記録だけが残された。24試合に出場し、30打数(35打席)無安打。昨シーズンの日本プロ野球における最多打数ノーヒット。そして野手に限ると一シーズンを通しての無安打新記録となってしまった(これまでは73年、広島・久保俊己のシーズン32打席無安打)。苦しみ、もがき、悔しい思いをした1年はようやく終わった。吉田は今、新たなスタートを切った。
「苦しかったですね。ヒットを打ちたい気持ちばかりが前に出て、気持ちも落ち着かない。ヒットが欲しいと焦ると、ますます打撃がおかしくなる。悪い方にどんどん行ってしまった。悪循環に陥ってしまっていました」
石垣島キャンプは第3クールから快晴が続いた。青空の下、吉田はまだ悔しさが残る表情で昨シーズンを振り返った。
ムードメーカー的な明るさが持ち味の若者だが、昨年はいつのまにか寡黙になっていた。シーズンが終わり秋季キャンプ、自主トレと悔しさをボールにぶつけるように、ひたすら野球と向き合った。苦渋にまみれた2016年。振り返りたくはないが、忘れてはならない。いつも頭の中に、もがき苦しんだ日々の残像が残る。もう2度と味わいたくない。だからこそ、その反省を生かすべくガムシャラな姿勢で春季キャンプに挑んでいる。
スタートは最高だった。「オマエで行くぞ!」。シーズン開幕前日の打撃練習中に伊東勤監督から声をかけられた。前年117試合に出場したライバルの田村龍弘捕手ではなく、吉田がプロ入り初となる開幕スタメンを言い渡された。相手はファイターズ。先発は日本中が注目をする投手・大谷翔平。本拠地は満員に膨れ上がり、異様な雰囲気に包まれていた。その試合、ヒットこそ出なかったものの巧みなリードでチームを勝利に導いた。マウンド付近での勝利のハイタッチ。その中心に背番号「24」がいた。幸先のよいスタート。心地よい気分に包まれた。しかし、地獄の日々はそこから徐々に始まった。