「3年くらい、ずっと思っている」―元女房役も待つ早大ドラ1トリオの復活
ドラ1トリオの球を受けた元日本一捕手は、なぜ一般企業に進んだのか
白川さんも社会人で野球を続けたいという思いはあったが、社会人チームからの話はなかった。
「就職活動をしながらも『野球もやりたいな』という思いがありました。セレクションを受けようか悩んでいましたが、監督から『そんなに社会は甘くないぞ』と言われました。選手を引退して、30歳くらいから仕事を始めるより、最初から腹をくくって一般企業に就職しようと決めました」
甲子園で日本一を経験し、大学でも早大黄金期を築いた白川さんだったが、いざ就職活動を始めると、周りの学生に比べて劣等感を感じたという。
「野球しかやっていなかったので、同級生と全然違いました。みんな、アルバイトもして、サークルにも入って、留学をしたり、いろいろな遊びも経験していて……。そういうものが自分には何もありませんでした。知り合いの数も全然違うんです。野球で学んだことはいっぱいあるけれど、『これじゃダメだな』と思いました」
白川さんは「いろんな人と出会いたい」「いろいろなことを知りたい」という思いから、大手総合商社に入社を決めた。
「就職活動をしていた当時は安易な考えですが、『自分の強みを生かせるからスポーツに携わりたいな』と思っていたこともありました。商社は、物を買う、売るという両面を知ることができます。海外に行くこともできるし、お客さんもいます。『いろいろな人と関われるな』と思って入社を決めました」
「野球で学んだことしかないくらい、いろいろ経験させてもらいました。どこかで、野球界に恩返しをしたいですね」と話す白川さん。今は、大学時代をともに戦い、プロの世界で苦戦する3人を応援している。
「今年はやってくれると思いますよ。ここ3年くらい、ずっと思っているんですけどね」
白川さんの笑顔には、会社員として仕事のやりがいを感じている充実感が溢れていた。
【了】
篠崎有理枝●文 text by Yurie Shinozaki