“隠遁生活”から現場復帰しWBC制覇 米国を初優勝に導いた72歳監督の手腕

難題と思われた米国WBC優勝、リーランド監督が見せた涙

 数々の熱闘を生んだ第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は、野球の母国・アメリカ合衆国が悲願の初優勝を決めて幕を閉じた。スコア上は8-0と一方的な展開となったプエルトリコとの決勝戦だったが、アメリカが1次ラウンドから歩んだ道のりは決して容易いものではない。それを物語ったのが、試合後に見せたジム・リーランド監督の涙だろう。

 パイレーツ、マーリンズ、ロッキーズ、タイガースで監督を歴任したベテラン指揮官は、タイガースでの2013年シーズンを最後にユニフォームを脱いでいた。MLBコミッショナーオフィスやタイガースでスペシャルアドバイザーを務めるなど一戦から退いていたリーランド氏に、“米国WBC初優勝”という大きな指令を出したのが、元ヤンキース監督で第3回WBCアメリカ代表監督を務めたジョー・トーリ氏だった。

 現在、MLB機構でルール改訂や選手の処罰など野球運営面でのトップに立つトーリ氏は、自らがWBCアメリカ代表のGMとなり、旧知の仲でもあるリーランド氏に監督を任せた。オールドスクール、いわゆる昔気質の2人だ。GMとしてサポートするという盟友の頼みを断れるはずもない。リーランド監督は3年の“隠遁生活”から現場復帰。72歳のベテラン監督は、自分の孫と言ってもおかしくないほど若い選手たちをまとめ上げ、難題と思われた優勝に導いた。

 チームがキャンプ地のフロリダ州フォートマイヤーズに集合したのは、3月7日のことだった。そこから決勝戦まで、わずか2週間あまり。チームとして体をなさないまま終わっても不思議はないが、「本当にいいチームになった。特別な仲間になったよ」(クロフォード)と選手が言うまでになったのは、リーランド監督の指揮の上手さと細やかな気遣いのおかげだ。

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